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※投稿者は作者とは別人です 408 :外パラサイト:2010/05/30(日) 05 57 29 ID 6LiHdjEo0 1484年(1944年)11月7日 ルークアンド共和国ヘラナブタ高原 第715戦車駆逐大隊に所属するハロルド・チャップマン中尉は、対戦車自走砲四両から成る偵察小隊を率 いて山間の小路を進んでいた。 レーフェイル大陸派遣軍は、北大陸で戦うアメリカ軍や南大陸連合軍に比べ比較的旧式な装備をあてがわれ ることが多く-さすがに現場からの突き上げを無視できなくなったのか最新鋭のM26重戦車が一個中隊 だけ届くことになっているが-チャップマンの部隊は未だにハーフトラックに75ミリカノン砲を載せた M3GMC(ガンモーターキャリッジ)を使用している。 「いや~この自走砲というヤツには驚かされますな!で、こいつはどんな魔法で動いておるのですか?」 「いや、魔法じゃなくて…」 そしてチャップマンの隣りで“はじめてのじどうしゃ”に興奮し、千切れるような勢いで尻尾を振っている のが、ルークアンド共和国郷土防衛隊志願予備少尉ユッカ・トロンベルカである。 郷土防衛隊は、その名が示すとおり全員が地域住民のボランティアであり、銀髪と狐耳が目を引くユッカは 19歳という若さで分団の指揮を任されている。 これも占領軍による過酷な弾圧とそれに対するレジスタンス活動の結果、人口に占める二十~三十代の男性 の割合が極端に低下していることの影響である。 ここヘラナブタ高原では、マオンド軍の撤退後もブービートラップとして置き土産にされたり、術者が戦死 してコントロールが効かなくなったりで野生化したキメラや召喚獣による被害が後を絶たないため、ルーク アンド国内で休養と再編成の途中だった715大隊からチャップマンの小隊が抽出され、郷土防衛隊と共同 で野良キメラ退治を行うことになったのだ。 チャップマンの自走砲小隊とユッカ率いる郷土防衛隊ヘラナブタ管区第三分団は、一番最近野良キメラが目 撃された無人の集落に到着した。 戦前はトンキューと呼ばれる牛に似た食肉獣を飼育して生計を立てていた農村は、戦火に晒され全住民が離 散した今となっては荒れ放題の廃墟と化している。 チャップマンは村はずれの草原に陣を構えた。 野良といっても生物兵器、敵兵を攻撃するよう訓練されたキメラを捕捉するには自分自身を囮にするのが最 も効率がいい。 「これはですね、こうやってソースを絡めて食べるんです」 「この果物の蜂蜜漬けも美味しいですよ~」 で、キメラを待つ間に食事をとることになったのだが、貴重な男手は全て正規軍か復興関連事業に取られ、 十代の女性が隊員のほとんどを占める郷土防衛隊との共同作戦である。 気分はすっかりガールスカウトの野外実習であった。 「遠足じゃないんだがな…」 「まあ大目に見てやってください」 思わずボヤきの出るチャップマンの隣りに腰を降ろしたユッカが言った。 「みんな長年待ち望んでいた自由ってやつを満喫してるんですよ、マオンドに支配されていた頃はほとんど 家畜扱いでしたから」 楽しそうにGIと交流する部下の姿を目を細めて見守るユッカのうなじから鎧に隠れた背中にかけて、薄い ピンク色の筋が走っている。 実家が牧場をやっているチャップマンは、それが棒か鞭で肉が裂けるまで打たれた跡だということを知って いた。 409 :外パラサイト:2010/05/30(日) 05 58 20 ID 6LiHdjEo0 その日の夕刻までにチャップマン小隊は4体のキメラを仕留めた。 力はあるが動きの遅い攻城用キメラは75ミリ砲の榴弾で吹き飛ばし、動きの速い肉食獣タイプは車載機銃で蜂の巣にする。 剣や槍で武装した郷土防衛隊ははっきり言って空気だった。 代々武闘家の家柄で腕に覚えありなユッカは「私の時代は終わった…orz」状態である。 と、その時- 突然の地鳴りとともに地面がモコモコと盛り上がる。 大地を震わせ、大型トラックの急ブレーキのような咆哮をあげながら、灰色の岩塊を連想させるせる巨大生物が姿をあらわした。 「あれはゴスゴツゴル!」 「知っているのか雷d…じゃなくトロンベルカ少尉?!」 「うむ、実は私も実物を見るのは初めてなのだが村の古老の話では、普段は地中深くに潜み地上に出てくることは滅多に無いが、ひとたび暴れ出すと町一つ潰れるくらいで済めば良いほうだとか」 「とにかく撃てドンドン撃て!」 だがゴスゴツゴルの皮膚は下手な戦車より強靭で、M3自走砲の75ミリ徹甲弾はピンポン玉のように跳ね返されてしまう。 「ファック!こんな化け物が出てくるなんて聞いてないぜ!」 つい品の無い単語を口にしてしまうチャップマンに、ユッカが並々ならぬ決意を漲らせた表情で言った。 「私にいい考えがある」 ちゃ~らら~ら~(アメリカ国旗→ルークアンド国旗) 横一列に並んだ自走砲が撃ちまくりながらバックで後退する。 実害が無いとはいえ、さすがに集中的に顔を狙われるのは鬱陶しいらしく、ゴスゴツゴルは一直線におかしな鉄の箱の群れに向って突っかける。 GMCに誘い出された岩石怪獣が一本の巨木のわきにさしかかったその時- 「といや!」 木のてっぺんで待ち構えていたユッカがゴスゴツゴルの背中に飛び乗った。 「ここだ!」 怪獣の背中で仁王立ちするユッカは、手にした矛を逆手に持ち替え、何故か都合よく背中に開いている隙間から不気味に脈動する心臓部を抉り出す。 ゴスゴツゴルの目から光が消え、地響きを立てて地に伏した巨体に無数のひび割れが走る。 岩石怪獣は瞬く間に只の岩塊に変わってしまった。 矛を振り上げ勝利のウォークライを挙げるユッカ。 「なんか一番美味しいとこ持っていかれましたね」 「まあいいだろ」 チャップマンは砲手を務める伍長に言った。 「ファンタジー世界じゃモンスター退治は勇者の仕事だ」 410 :外パラサイト:2010/05/30(日) 05 59 09 ID 6LiHdjEo0 こうして一つの事件は終わりました しかし安心してはいけません ここは全てのバランスが崩れた恐るべき世界なのです アメリカ人の想像を超えた神秘と驚異は今もどこかで じっと牙を剥くチャンスを窺っているのです (ナレーション:石坂浩二)
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第167話 海兵隊員パイパー 1484年(1944年)7月30日 午後6時 ジャスオ領エルネイル 上陸部隊の1部隊であるアメリカ海兵隊第3海兵師団は、上陸地点から約30マイル東に進んだ ウルス・トライヌクという地点にまで進出していた。 第3海兵師団は、第3水陸両用軍第1海兵軍団の所属部隊として26日から戦い続けてきた。 第3海兵師団は上陸当日に、拠点を制圧していた陸軍の101空挺師団と合流した後、街道を進み続け、 29日にウルス・トライヌク地区に到達し、夜明けまでには同地を制圧した。 その後、第3海兵師団は補給と休養のため、31日の早朝まで、一時進撃をストップすることになった。 第3海兵師団第3戦車大隊に所属するグルジア系アメリカ人のアウストラ・ウムカシビリ曹長は、 手提げ鞄に入っているビール(急造のPXで手に入れた)を片手にタバコを吹かしながら、自らが 乗車している戦車に向かっていた。 ビールを受け取ってから5分ほど歩くと、彼は戦車のすぐ側にまで近付いていた。 戦車の側で幾人かの男が立ち話をしている。その中の1人は、彼に気付くなり、親しげな仕草で手招きした。 「おーい!早く来い!皆待ってるぞ!」 「へいよ!今行きますぜ!」 ウムカシビリ曹長は小走りで戦車に近寄った。 「パイパー少佐、ビールを調達してきました。」 彼は、手招きした男。第3戦車大隊の指揮官であるヨアヒム・パイパー少佐にビールを手渡した。 「ご苦労さん。皆にも渡してくれ。」 パイパーはウムカシビリに微笑みながら言った。 ウムカシビリとパイパーを除く3人の戦車兵は、それぞれがバドワイザーのボトルを手に取った。 この日、彼らは戦車の整備に1日を費やした。 愛用してきたM4シャーマン戦車は、上陸開始から続く連戦によって整備が必要となっていた。 そのため、パイパーはこの1日の休みを利用して、指揮下の戦車部隊に対して、徹底した整備を行うように命じていた。 彼の乗車も例外ではなく、パイパーは自らが先頭に立って、整備に当たった。 整備は5時30分頃に終わり、彼らはようやく、この日の任務から解放された。 「諸君、今日1日ご苦労だった。これで、しばらくは満足に戦えるだろう。では、明日以降の無事を 願って乾杯と行こうじゃないか。」 パイパーは、ビールのボトルを高く掲げた。 「乾杯!」 「「乾杯!!」」 パイパーの音頭と共に、彼らはビールを口に含んだ。 ヨアヒム・パイパー少佐は、元々はドイツ武装親衛隊の将校である。 1915年、ベルリンに住む軍人の家庭で生まれた彼は、士官である父に憧れ、子供の時から軍人になる事を夢見ていた。 そんな彼の夢も、1934年、19歳の時に叶うことになる。 パイパーは厳しい審査の末に、親衛隊特務部隊への入隊が決まり、19歳の時に入営した。 それからしばらく経った後、SS士官学校に選抜で入校、優秀な成績を収めて卒業し、少尉に任官した。 1938年には親衛隊最高責任者であるハインリヒ・ヒムラー長官の副官に任ぜられ、同年後半には LAH連隊の1中隊長に任命された。 翌年9月のポーランド戦役では、その中隊の指揮官として参戦している。 後に続くフランス戦役にも、当時、旅団に昇格したLAHの一員として参加し、数々の功績を収めた。 パイパーは41年3月初めに騎士十時章を授与され、新聞には武装親衛隊の鑑であるとして写真つきで大きく報道された。 彼のドイツ軍人としての軍歴は、ようやく上げ潮に乗ったかと思われた矢先、彼はイギリス軍との戦闘で重傷を負ってしまった。 パイパーは意識不明のまま後方に移され、次に気がついたのは、負傷から3週間も経った4月12日の事であった。 それから彼は、病院での療養を余儀なくされた。 重傷を負ったパイパーであったが、8月には全快し、彼はようやく前線復帰が出来ると思っていた。 だが、そんな彼には、思いもよらぬ命令が待っていた。 その命令とは、駐米ドイツ大使館付の駐在武官に任ずるという、彼から見たらとんでもない物であった。 「前線では1人でも多くの兵隊が必要だと言うのに、上の連中は何を考えているんだ!?」 この唐突な辞令に激怒した彼は、大隊長のみならず、旅団長のパパ・ゼップ(ゼップ・ディートリッヒ)にまで 直訴したが、最後には彼も折れた。 パイパーは、気持ちを新たにし、 「こうなったら、アメリカが参戦するまで、スパイの真似事でもしてやるか」 と冗談めいた言葉を呟きながら、アメリカ勤務へと赴いた。 そんな彼にも、運命の日は訪れた。 1941年10月19日。アメリカ合衆国は、突然、異世界に召喚されてしまった。 それも、本土やアラスカに居た、外国人達も道連れに・・・・ パイパー達の誇りにしていたドイツは、アメリカが転移したことによって、完全に消えてしまったのである。 パイパーも他の武官達と同様に、ドイツ軍人としての未来が絶たれてしまった事に愕然としていた。 しかし、彼は落ち込みも激しかったが、立ち直りも素早く、アメリカが転移したという知らせから翌日には、 これからはこの国で生きていくしかないと決意を固めていた。 パイパーはアメリカ側から軍への志願を提案された時に、真っ先に頷き、彼はアメリカ軍に入隊した。 1942年3月には合衆国海兵隊に少佐として配属となった。 翌年4月には、南大陸からやってきた北大陸軍の残存軍の一部である、自由ジャスオ軍の訓練教官に任ぜられ、 自らが体験してきた機甲戦術のイロハを全て叩き込んだ。 後に、パイパーの指導を受けた自由ジャスオ軍は、第1機甲旅団として編成されている。 1944年4月に第3海兵師団に移籍となり、彼は同師団の第3戦車大隊の指揮官に任命され、上陸日には後退中の シホールアンル軍1個大隊を包囲し、降伏させている。 その後、第3海兵師団は後退中の敵部隊と戦いながら、丘陵地帯の出口にあたるウルス・トライヌクへ到達した。 そこで、彼らは一時休養を取ることになったのである。 ひとしきりビールを飲み終えたパイパー達は、至福の表情を浮かべながら、早くも2本目のボトルを手に取っていた。 「少佐、ひとまず、明日の朝まではゆっくり眠れますな。このウルス・トライヌクは既に前線から後方の占領地に なっていますし。」 操縦手のフラックス・リンドルマン軍曹がやせ気味の顔をほころばせて言う。 「おいおい、後方とは言っても、ここは前線から20キロも離れていないぜ?気を抜くにはまだ早いぞ。」 パイパーは首を横に振りながら、リンドルマン軍曹に注意する。 「確かに。しかし、ここ最近は、101師団の連中が頑張っていますな。今日だって、リモントンギを制圧しています。」 無線手を勤める黒人兵のウィル・ロードル伍長は、リンドルマン軍曹とは対象的な、単調な口ぶりでパイパーに言う。 「ああ。流石は空挺部隊だよ。通常の歩兵部隊と比べて、錬度は高いからな。」 「頑張っているのは空挺部隊だけではありません。中部攻撃群に属していた自由ジャスオ軍は28キロも前進しましたし、 南部攻撃群のカレアント軍やミスリアル軍等の南大陸軍も丘陵地帯の東側出入り口を制圧しています。これで、連合軍は エルネイル地方西部をほぼ占領しました。この調子で行けば、8月までにはジャスオ領からシホット共を追い出せるかも しれませんぜ。」 ウムカシビリ曹長は、リンドルマンほどでは無いものの、やはり楽観的な口ぶりでパイパーに言った。 エックスレイ作戦が開始されてから早4日。 アメリカ軍を始とする連合軍は、海岸地帯から東に約30キロ、南北に40キロほどの地域を完全に制圧した。 この4日間の戦闘で、シホールアンル軍は後退しながらも、果敢に戦った。 しかし、ホウロナ諸島や、洋上に展開する機動部隊から飛来する攻撃機の支援を受けた連合軍部隊は、抵抗拠点を 1つ1つ潰しながら進み続けた。 その結果、シホールアンル軍は、海岸防備部隊であった第11軍が壊滅し、第9軍も半壊状態となり、死傷者34800人、 捕虜2万以上を出す大損害を被った。 連合軍部隊の快進撃は、それまで、シホールアンル帝国の占領下にあったジャスオ領の民たちを奮起させ、連合軍は あちこちの町や村で解放軍として歓迎された。 海兵隊も同様であり、ウルス・トライヌク地方を制圧した時は、家の中に潜んでいた住人達によって猛烈な歓迎を受けている。 連合軍部隊の将兵達は、この快進撃に誰もが楽観気分を感じ始めていた。 「さて、それはどうかな。」 だが、パイパーは冷静であった。 「今日、101師団はリモントンギを制圧したと言ったな?」 彼はロードル伍長に問う。 「はい。詳細は判りませんが。」 「俺は知っている。101師団は、リモントンギに居た敵1個大隊と戦闘を交えた。2時間の戦闘でシホールアンル軍は町から 逃げて行った。時に午前11時だ。完全武装の1個師団相手に、1個大隊が戦ったんだから、最終的に町から逃げ出すのは当然だな。」 パイパーの言葉に皆が頷く。 「だが、問題はここからだ。午後1時。101師団は休憩もそこそこに、リモントンギの町から出て西に向かった。そして、 2キロほど離れたやや緩い高地の途中で、いきなりシホールアンル側の部隊と遭遇した。戦闘はしばらく続いたが、夕方には お互いに膠着状態となり、その後は静かな睨み合いが続いているようだ。」 「少佐。もしかして、逃げた敵さんは、応援を引き連れて町に戻ろうとしたんですか?」 「敵が応援を引き連れて、反撃に転じたのかどうかまでは、俺には判らん。」 パイパーは首を振った。 「だが、これが敵の本格的な反攻の始まり・・・・という事は、充分に考えられるな。」 シホールアンル軍は、第11軍、第9軍の残存部隊を後退させつつ、後方予備軍である第20軍や第27軍を主力に新たな前線を構築しつつある。 連合軍司令部は、シホールアンル側の正確な動向を未だに掴めていない。 しかし、上陸作戦開始から既に4日が経っている。 シホールアンル軍が体勢を立て直して、大反撃に転じる可能性は充分にあった。 「反攻の始まり・・・ですか。しかし、上陸から既に4日が経っています。敵が動き出すには、タイミングが遅いのではないですか?」 「いや、今が妥当だろう。」 パイパーは即答する。 「俺たちの進撃路は、両側に山岳地帯が聳え立っている。ここじゃあ、シホールアンル軍は火力が優勢な俺たちと、真正面から 立ち向かわねばらない。それを防ぐためには、もっと広い場所で俺たちを迎え撃つしかない。」 パイパーはこれを見てみろと言いつつ、側にあったノートに何か地図を書き始めた。 「適当に、この辺りの地図を描いたが、一番左端に居るのが俺たちだ。101師団は、ここから10キロ離れたリモントンギに居る。 ここは平野部だから、機動作戦を行うには持って来いだ。敵が反撃を仕掛けるとしたら、まず、リモントンギで決戦を挑んでくるだろう。」 「リモントンギには101師団しか居ませんからな。敵の主力部隊から見れば、まさに好機ですね。」 ウムカシビリが納得したように頷く。 「その通りだ。特に、101師団が布陣しているこの緩やかな丘は、一番進撃に適し、かつ、野砲を布陣するには都合の良い場所だ。 敵はまず、安全を確保するために、101師団を全力で排除するかもしれない。ここを取られれば、俺達は敵に進撃路を塞がれてしまう。」 パイパーは、丘の辺りをペンで小突きながら言う。 「敵の目的はまず、俺たちの進撃を止める事だ。そのためには、全力で立ち向かってくるだろう。」 彼はそう言いつつも、何故かため息を吐いた。 「なかなか、上手い作戦ですな。」 リンドルマン軍曹は、パイパーの読みに感心する。 「上手い・・・か。俺から見たら、まだ辛抱が足りないと思うがね。」 パイパーの意外な言葉に、全員が息を呑んだ。 「辛抱が足りない・・・ですか?」 「そうだ。」 彼は頷く。 「もし、俺が指揮官だったら、もうちょっと引き付けてから反撃を開始するな。無論、リスクは大きいが、敵に与える損害も大きくなる。」 彼は、ノートに何かを書き加えていく。 「要するに、ある程度纏まった敵を内陸に呼び寄せて、時機を見て包囲するんだ。これなら、いくら火力が優秀な敵とはいえ、 全周に纏まった砲火を浴びせる事は出来ない。」 「少佐。これは、ノール攻防戦で、ドイツ軍がやった機動作戦ですね?」 パイパーは我が意を得たりとばかりに頷く。 「当たりだ。あの作戦のお陰で、俺の属していたA軍集団は何とか持ち堪えられた。」 ノール攻防戦とは、1941年2月10日から20日にかけて、フランス北西部にあるノール地方で行われた戦いの呼び名である。 当時、フランス北方の作戦を担当していたA軍集団は、ベネルクス三国制圧後に行われた、11月の攻勢失敗の損害を補うため、 後方からの増援を得て、フランス北部で待機中であった。 2月時には、失われた戦力の補填も終わり、3月頃の攻勢を準備しつつあったが、2月8日に、A軍集団司令部に正面の英仏軍が 攻勢を仕掛けようとしているという思いがけぬ情報が飛び込んだ。 A軍集団司令部は、直ちに指揮下の部隊に通達した。 このため、前線に配備されていたであったドイツ第5軍は敵の奇襲を受けずに済んだ。 だが、英仏軍は3個機甲師団、2個機甲旅団、5個歩兵師団、4個歩兵旅団という大軍でもって攻め立てたため、第5軍のみでは 押し切られる可能性が高かった。 第5軍は、第4軍と共にノールを防衛している。 もしノールを取られてしまえば、A軍集団は南北に分断され、南方でB郡集団と睨み合っている英仏軍にも攻撃されれば、 ドイツ側の戦線は大きく後退する危険がある。 やり方を間違えれば、ドイツ軍はフランス領から叩き出されてしまう。 だが、それを防ぐ手段は既に準備されていた。 前任者に代わって、新しいA軍集団の指揮官に任ぜられたエーリッヒ・マンシュタイン大将は、ノール防衛の第5軍並びに 第4軍に対してすぐさま後退するように命じた。 この後退命令を受けた第5、第4軍は後退を開始し、進撃してきたフランス軍は、後衛部隊と交戦しつつも、 13日にはノール地方デナインに到達した。 英仏軍がノールに突入してから5日目の2月14日。 ドイツ側のとある通信部隊が、敵軍の車両部隊が燃料の補給を催促している通信を傍受した。 マンシュタインは好機と捉え、撤退すると思わせて、密かに敵の側面に展開させていた第4軍に行動開始を命じた。 第7装甲師団を始めとする第4軍の各隊は、2月14日早朝、空軍の援護の下、事前の計画通りに英仏軍の側面に猛攻を加えた。 目前の第5軍を追い詰めていたと思い込んでいた英仏軍は、第4軍の思わぬ攻撃の前に半ば混乱状態に陥った。 14日正午には、第7装甲師団の先頭大隊と、LAH旅団の先頭中隊が出会い、ノールに侵入してきた英仏軍を完全に包囲した。 戦闘は19日夜半まで続き、ドイツ軍、英仏軍共に激戦を繰り広げた。 20日早朝。A軍集団の隷下部隊に完全に包囲された英仏軍は、弾薬、糧食が完全に切れ、遂に降伏した。 英仏軍は、この攻勢の失敗によって死傷者、捕虜12万名以上、損失、鹵獲車両2000両以上という大損害を被り、攻撃を指揮 していたクロード・オーキンレック英軍大将も捕虜となった。 ドイツ軍は奇跡とも言える機動戦術で敵の大軍を包囲殲滅し、見事危機を乗り切ったのである。 だが、ドイツ側も損害は大きく、死傷者数は総計で3万名にも上った。特に、ノール攻防戦で一番の活躍をした“幽霊師団”こと、 第7装甲師団は全軍の中で損害が最も大きく、全体で4割の損耗を被り、師団司令部もフランス軍機の空襲を受けて壊滅している。 とはいえ、A軍集団はこの大勝利によって、フランス北西部での主導権を握る事になった。 パイパーは、ノール攻防戦で挙げた功績で、41年3月1日に騎士十時章を授与されている。 「なるほど。引き寄せてから一気に包み込む、って訳ですか。こりゃ、やるほうは気持ち良いですが、やられた方は悪夢ですね。」 「まっ、タイミングが合わなければ各個撃破されるがね。」 パイパーは苦笑を浮かべながらウムカシビリに答える。 「しかし、俺が言った機動戦法だが、あれは今ほど、航空兵力が強力ではないから出来た事だ。イギリスはアメリカ軍のように、 いくら叩いても落ちんB-17を持っていなかったし、戦闘機の性能も今と違ってやや古かった。もし、俺が敵の指揮官で、 例の戦術を行っても、空からしきりに妨害されて思うように出来なかっただろうな。」 「確かに。」 装填手のフェルト・パルテノウ伍長が頷く。 「ホウロナ諸島には陸軍航空隊が居ますし、洋上には第3艦隊の機動部隊が居ます。シホット共の航空部隊も未だにうじゃうじゃ 居ますが、味方はそれ以上です。いくら敵の地上部隊が上手く動いても、必ず多数の攻撃機が襲い掛かってくるでしょうね。」 「ああ。俺としては、第3艦隊が沖に陣取っているせいか、航空支援の密度が濃くなった気がする。」 パイパーは脳裏に、輸送船の甲板から見た第3艦隊の艨艟群を思い浮かべる。 長大な甲板を持つエセックス級正規空母や、小振りながらも有力な戦力として重宝されているインディペンデンス級軽空母、 それに護衛の新鋭戦艦や巡洋艦、駆逐艦が隊形を組みながら航行していく様はまさに圧巻であった。 彼の生まれ故郷であるドイツも、列強各国の海軍に対抗して大規模な建艦計画を用意していたと聞いている。 Z計画と呼ばれるその建艦計画では、1945年末までに空母4隻、戦艦6隻、巡洋戦艦4隻、装甲艦12隻、巡洋艦6隻、 駆逐艦60隻が建造される予定であった。 だが、アメリカは1944年の時点で、主力だけでも20隻以上の高速空母に30隻以上の護衛空母、10隻の戦艦と 4隻の巡洋戦艦を竣工し、作戦行動を行わせている。 巡洋艦、駆逐艦は数えるだけでも嫌になるほどの桁外れの数字であり、潜水艦ですら大量建造、大量竣工という有様である。 ドイツZ計画の戦力と比べると、2倍どころか、3倍以上もの戦力差である。 これだけでも圧倒的なのに、アメリカは更に複数の正規空母や戦艦を完成させつつある。 (もし、アメリカがこのまま元の世界に残り、ドイツと戦っていたら、恐ろしい事になっていただろうな。) パイパーはそこまで考えてから、深いため息を吐く。 彼は、アメリカがこの世界に呼ばれたことを、心の底から感謝していた。 「頼れる味方が付いてるんですから、明日以降もサクサク進めますよ。」 「本当に、お前たちは楽観的だなあ。」 パイパーは、楽観気分が拭えない部下の戦車兵達に呆れつつも、内心ではそれも仕方ないかと思った。 「おい、今何時だ?」 「6時30分です。」 ウムカシビリに聞かれたパルテノウが、時計が指していた時刻を見、彼に教える。 「ラジオでも聞こうか。おい、無線機の点検だ、急げ。」 パイパーはおどけた口調で言いながら、ロードル伍長の肩を叩いた。 ロードル伍長は苦笑しながらイエス・サーと答えつつ、戦車の中に入っていく。 やがて、無線機から朗らかな歌声が聞こえ始めた。 「お、歌が流れ始めているな。」 彼は頬を緩める。 「リリー・マルレーンですな。いつ聞いてもいい歌だ。」 ウムカシビリが微笑みながらパイパーに言った。 リリー・マルレーンは元々、ドイツの歌であったが、あまり広く知られては居なかった。 第2次大戦中、ドイツ軍の一将校がラジオ局で放送したところ、たちまちのうちに流行歌となり、しまいには英仏軍にも広まった。 アメリカではドイツ出身のハリウッド女優、マレーネ・ディートリッヒが1482年9月に、ヴィルフレイング慰問の際に 行われたライブで歌った後、そのシンプルながらも、よく作られた歌詞がたちまち人気となり、その年の末にはアメリカ本国でも 流行歌として頻繁にラジオで流された。 この歌は南大陸各国にも広まり、ここ最近では、収容所にいるシホールアンル軍捕虜の中にも、リリー・マルレーンを口ずさむ者が 増えているという。 ちなみに、最近のアメリカ軍ではアイ・ウィルビー・シーやグッドナイト・アイリーンといった曲に人気が出始めているが、 やはりリリー・マルレーンも人気は高い。 「いとしの~、リリーマルレーン・・・・」 気が付くと、彼らは歌詞を口ずさんでいた。歌声は彼らのみならず、他の野営地からも響いていた。 「ふぅ、やはり、リリー・マルレーンはいい曲だ。1日の終わりにこれを聞くと、今日も生き残ったなぁと実感できる。」 パイパーはしみじみとした顔つきで独語する。 フランス戦の頃はよく聞いていた。何度も聞いたが、不思議にも飽きなかった。 「この曲を聴くと、癒されていると感じますね。」 「こいつはもともと、そういう曲だよ。」 ウムカシビリの呟きに、パイパーは笑みを浮かべながら答えた。 「どんな目にあっても、これを聴けば、嫌なことなんざ吹っ飛んじまう。いままでもそうだった。これからも、この曲は 人の心を癒し続けていくだろうな。」 1484年(1944年)7月30日 午後8時 ジャスオ領レンケリミント 前線のあるウルス・トライヌクより西方25ゼルド(75キロ)離れた場所にあるレンケリミント市の中心部には、 急遽展開したシホールアンル陸軍第20軍の司令部が置かれていた。 その司令部の作戦室では、6人の男女が机の周りに立ち、机に広げられた地図を見つめている。 「やはり・・・・ここの敵部隊を取り除かねば、各師団の足並みは揃いません。」 第20軍主任魔道参謀であるレーミア・パームル大佐は、険しい顔つきで、同じく地図を見つめている ムラウク・ライバスツ中将に結論を述べた。 「俺もそう思う。でなければ、テイマート閣下の言われたとおりに敵を押し返せないからな。」 ライバスツはそこまで言ってから、天井に顔を向ける。 「もっとも、私としては君が以前提案した作戦案を取り入れたかったのだが・・・・上からの命令とあれば致し方あるまい。」 彼は大きなため息を吐いた。 ライバスツの率いる第20軍は、昨日の未明までには部隊の展開を終えていた。 第20軍の北には、同じ後方予備軍でもある第27軍も配置しており、温存されていたシホールアンル軍部隊は、 テイマートの提案した作戦案の通りに動いている。 ジャスオ領中部方面軍司令官であるテイマート大将は、後方予備軍である第20軍と第27軍を主力に、山岳地帯から 抜け出てきたアメリカ軍に攻撃を仕掛け、大損害を負わせて山岳地帯の間にある地峡部に押し込むという作戦を考えた。 この作戦には、2個の後方予備軍の他に、第11軍や第9軍の残余も参加するほか、航空部隊も多数加わる事になっている。 テイマートは、陸空一体の共同作戦でもって、米軍に大損害を与えられると確信していた。 しかし、そんな彼の作戦を気に食わないと公言した将校がいた。 その将校こそ、第20軍の主任魔道参謀であるパームル大佐であった。 パームル大佐は、3日前の作戦会議で自らの案を披露した。 パームル大佐の考えは、まず、敵を事前に前線として定める予定であったリモントンギから、一気に5ゼルドも離れた後方の ウリスルトルグまで前進させる。 その間、敵の前進部隊には、補給が成った第11軍や第9軍の残余を置き、抵抗しながらゆっくりと後退させる。 無論、犠牲は大きいだろうが、それは敵とて同じである。 第11軍並びに、第9軍の残余部隊は壊滅しないように注意を払いつつ、ウリスルトルグまで後退したら、後は一目散に後方に逃げる。 そして、アメリカ軍はウリスルトルグを制圧する。作戦開始からウリスルトルグまで後退するには最低でも4日、最高で5日を 費やす様にし、その間、ワイバーン隊は敵の補給部隊を重点的に攻撃して、アメリカ軍の補給を絶つ。 補給路は完全に絶てはしないだろうが、それでもダメージは残るはずである。 そして、敵がウリスルトルグまで達した所で、第20軍や第27軍が側面から攻撃し、アメリカ軍を包囲殲滅する。 これが、パームル大佐の考えた作戦案だった。 彼女の考えは、多分に戦車の機動戦を参考にしていたが、パームルはストーンゴーレムが大々的に機動作戦を行うとしたら、 ウリスルトルグ近郊が最適であると確信していた。 それに対し、テイマートの考えた案では、作戦区域はリモントンギ周辺に定められる。 リモントンギ周辺では、歩行式であるストーンゴーレムでは通りにくい未確認の湿地帯が多数あり、進撃路は頑丈な 地形のある場所に限られる。 テイマートは、すぐにでもアメリカ軍を追い返したい一身で、反撃部隊の配置を前進させたのだが、それが、石甲師団の 機動性を削ぐと言う結果に終わってしまった。 パームル大佐は、ライバスツの援護射撃を受けて、なんとかテイマートに考え直してはどうかと言ったが、テイマートは頑として譲らなかった。 渋々、第20軍はテイマートの命令通り、指揮下の部隊をリモントンギから10ゼルドの場所に配備した。 しかし、これだけでは不十分だと考えたライバスツは、密かに第123石甲師団の一部(歩兵部隊が中心)をリモントンギ向かわせた。 その命令を下したのは、今日の早朝であった。 それから2時間後に、リモントンギが敵の歩兵部隊の急襲に合い、陥落したという報告が飛び込んだ。 リモントンギには第9軍に属している第51歩兵師団の1個大隊が守備についていたが、この1個大隊はわずか2時間の戦闘で町からたたき出された。 ライバスツはすぐに123師団から送った部隊をリモントンギに向かわせたが、部隊が逃げ出してきた51師団の部隊と合流し、 リモントンギまであと1000グレルまで迫った時、彼らはアメリカ軍と鉢合わせしてしまった。 すぐさま銃撃戦が繰り広げられたが、すぐにこう着状態となり、今では互いに睨み合っているだけとなっている。 その厄介なアメリカ軍が居座っている場所は、不運にも、テイマートが事前に進撃路として定めていた場所であった。 「命令に従った結果がこれだ。定められた数少ない進撃路の中で、最も重要な筈の道が、いきなり現れた敵さんによって 阻まれてしまった。これでは、反撃を開始する前にこっちが出鼻を挫かれた事になる。今頃、テイマート閣下は、敵に先手を 打たれたと悔しがっているだろうな。」 「しかし、攻撃命令が出ている以上、我々もやらなければいけません。」 参謀長が強張った口調でライバスツに言う。 「幸い、リモントンギの敵部隊は多くても歩兵2個師団程度です。対して、我々は4個師団並びに、2個旅団を用意しています。 それに、戦場は平らな草原地帯ではありませんから、敵の火力も、通常時と比べて全力を発揮できないしょう。」 「しかし、進撃路が限定されている事も忘れてはいけません。互いに足枷をつけられたまま戦いに望むと考えてもおかしくはありませんよ。」 パームル大佐が戒めるように言う。 「確かに。双方とも、いつも通りの力を発揮できないわけだ。」 「閣下。私としては、事前にワイバーン隊によって、対峙している敵地上部隊を奇襲攻撃し、抵抗力を削いだ方が良いと考えているのですが。」 作戦参謀が発言する。 「いくら寡兵とはいえど、相手は米軍です。奴らを打ち負かすには、まず航空攻撃で痛打を浴びせてから、じっくりと仕上げた方が良いかと。」 「奇襲なんて出来るわけが無い。」 パームル大佐はあっさりと切り捨てた。 「あなたは報告書を読まなかったの?アメリカ軍はレーダーと呼ばれる探知兵器を大々的に活用している。一部には、レーダーを搭載した 夜間飛空挺が、夜間爆撃にやって来たワイバーンを迎撃してきたという情報もある。そんな相手に奇襲攻撃を仕掛けても意味は無いわ。」 「パームル大佐の言うとおりだな。」 ライバスツも同意する。 「敵に奇襲は通用しない。攻撃するのならば、それこそ、一気に畳み掛けて、敵を蹴散らすしかあるまい。まずは、丘の斜面に陣取っている アメリカ軍部隊を全力で叩き潰すことに集中しよう。こいつらを退かさん限り、作戦は成功しない。」 (最も、俺としてはこの作戦そのものが危ういと思うのだが) ライバスツは、最後の一言は口に出さなかった。 とにもかくも、第20軍司令部の意見はようやく纏まった。 作戦決行は翌日早朝。 シホールアンル軍の最初の獲物は、丘の斜面に陣取る忌々しい歩兵部隊。 101空挺師団であった。
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第165話 オールフェスの理想 1484年(1944年)7月27日 午前8時 シホールアンル帝国首都ウェルバンル その日、ウェルバンルの天気は荒れに荒れていた。 3日前から続く大雨のせいで、首都の空気は完全に湿り、道行く人々の姿も通常時と比べて少ない。 露天は通常通り開いているが、どの店の主人も、降りしきる雨を忌々しげに見やりながら、一向に上がらない売り上げに表情を暗くしている。 そんな中を、1台の馬車が音立てて通り過ぎていった。 「しかし、数日前と比べると、雰囲気が暗いな。」 馬車の中から首都の様子を見つめていたウインリヒ・ギレイル陸軍元帥は、ため息混じりに呟いた。 彼は今、帝国宮殿に向けて馬車を走らせている。 何故、宮殿に向かうかは既に分かっている。 「それにしても、皇帝陛下から緊急のお呼び出しが掛かったとなると、俺はまた嫌みを言われてしまうだろうなぁ。」 ギレイルは疲れたような口ぶりで言う。 今日、朝は妻が作った上手い料理を食べ、すっかり精を付けたはずなのだが、どういう訳か、体の中に蓄えたはずの精は、 残っていないような気がする。 「それもこれも・・・・・!」 ギレイルは憤りを含んだ口調で言葉を発するが、最後までは言わず、胸にしまっておく。 帝国宮殿までの道のりは短く、あと5分もすれば目的地に到達する。 「はぁ。宮殿までの距離がもっと長ければ、俺も少しは楽する時間が増えるんだがなぁ。」 ギレイルは苦笑しながら呟いた。 それから5分後に、馬車は帝国宮殿に到着した。宮殿内に入った後、彼は会議室へと足を運んだ。 会議室に入ると、既に集まった閣僚や海軍総司令官が座っていた。 「おはようございます。」 ギレイルは、テーブスの前に置かれた椅子に座っている参加者達と、玉座に座るオールフェス・リリスレイ皇帝に向けて挨拶をする。 「おはようギレイル。」 玉座に座っている皇帝から返事が来る。オールフェスは、いつになくゆったりとした姿勢で席に座っている。 その表情は、傍目からは明るく見えるが、オールフェスをよく知るギレイルは、その笑顔は作られた物であると分かった。 (強張った笑顔だ。こりゃ、相当な修羅場になりそうだ) ギレイルは内心でビクつきながらも、毅然とした態度で頭を下げ、席に座った。 長テーブルをぐるりと見渡すと、まだ空きがある。 ギレイルは、壁に掛けられている時計をちらりと見る。 (まだ8時15分か。) 彼はふぅっと息を吐きながらそう思った。会議は8時30分から始まる。 時間は8時15分であるから、開始までにはまだ時間がある。 既に集まっている参加者達は暇をもてあますために、別の閣僚と雑談を交わしている。 「しかし、大変な事になったな。」 隣に座っていたエウマルト・レンス元帥が小声で話しかけてきた。 レンス元帥が何を思ってそう言ってきているかは、すぐに分かった。 「ああ。全く、とんでもない事態になった。」 ギレイルは顔を俯かせながら、小声でレンス元帥に言う。 「敵がまさか、こっちが全く知らない戦法で来るとは夢にも思わなかった。あれさえ無ければ、計画通り、 海岸の防備はがっちりと固まっていた筈なんだが。」 「敵の侵攻兵力も、事前に予測していた物と比べてかなりの規模になるそうだが。」 「ああ。連合軍は、俺達が考えていた以上の大軍を送り込んできている。陸軍総司令部では、現地部隊からの 応援要請が殺到しとるよ。」 ギレイルはそう話しつつも、ちらりとオールフェスを見やった。玉座の皇帝は、ギレイルとレンスをじっと見つめていた。 無表情で見つめるオールフェスに、ギレイルは内心でぎょっとなった。 「ここから先は会議が始まった時に話そう。ここでコソコソ喋り続けていたら、陛下に突っ込まれてしまうからな。」 「うむ。名案だな。」 レンス元帥は頷くと、先ほどと同じように黙り込んでしまった。 それから8時30分までの間に、新たに3人の参加者が加わった。 「さて、閣僚諸君。これより緊急の会議を始めるとしよう。」 オールフェスは、時計が8時30分を指したのを見計らって、自ら会議を始めさせた。 会議室には、各省庁の大臣と陸海軍の最高司令官が座っている。 彼は先ほどとは打って変わって、背筋を伸ばした格好で参加者達に話した。 「昨日未明、ジャスオ領中西部で、連合軍の奴らが大軍を送り込み、新たな大反攻を開始した。」 オールフェスの言葉に、事情を知らなかった(国内相や国外相は除く)閣僚達が驚きの声を漏らした。 「現地に展開している軍は、敵の侵攻部隊と激戦を繰り広げているようだが、情勢は俺達シホールアンルにとって、 あまり良いとは言えないようだ。ここから先は、陸海軍の責任者に説明して貰う。」 オールフェスは睨むような目付きで、ギレイルとレンスに視線を向けた。 まず、ギレイル元帥が席から立ち上がった。 「先ほど、皇帝陛下が申し述べましたように、昨日未明、連合軍はジャスオ領中西部にあるエルネイル地方に、 大規模な上陸作戦を敢行致しました。我々は、敵がどの地点に上陸しても対応出来るように戦備を整えておりましたが、 連合軍は我々の予想を遙かに超える大戦力でもってエルネイル地方に上陸しました。目下、現地軍は必死の防戦を続けて おりますが、敵は有効な航空支援と、物量によってしゃにむに進撃を続けており、エルネイル地方の情勢はかなり厳しい 物にあると存じ上げます。」 「ギレイル。少しばかり聞きたいことがあるんだが。」 言葉が句切られたのを見計らって、すかさずオールフェスが聞いてきた。 「お前はこの前、敵が上陸してきたら内陸に展開している機動軍で海岸の兵力を増やし、敵の侵攻を防ぐと言っていたな。 だが、俺が聞いた情報だと、機動軍は海岸には来れなかったとある。なんで、海岸の部隊は増援を受けられなかった?」 「はっ。その事に付きましては、現地部隊から幾つか報告がありますが、連合軍に加わっているアメリカ軍は、上陸作戦の 直前になって、降下部隊によって交通の要衝を制圧しています。」 「降下部隊か。俺も報告では聞いたが・・・・アメリカの奴らは本当に、空から大部隊を投入出来たのか?」 オールフェスは、独自に得た情報によって、交通の要衝がアメリカ軍と思しき降下部隊によって制圧された事を知っていたが、 彼はこの報告を信じられなかった。 最初、彼は現地の反乱部隊が連合軍と呼応して蜂起し、交通の要衝である拠点に大挙押し寄せて占領してしまったのだろうと 確信していた。 オールフェスの反応は当然とも言えた。 今、オールフェスに説明しているギレイルでさえ、最初は蛮族共の蜂起かと漏らした程である。 だが、その認識は、やがて間違いである事に気付いた。 「はい。現地部隊からの情報を詳しく分析した結果、アメリカ軍は、輸送機であるスカイトレインを兵員輸送機に改造し、 それに歩兵を乗せて占領する地域に送り込んだようです。」 「スカイトレイン・・・・あの物資輸送用の飛空挺をか!」 「はい。アメリカ軍は、その輸送機を使って交通の要衝を押さえたのです。現地軍の報告では、敵は1個軍団相当の兵を 投入したとあります。」 「1個軍団・・・・おいおい、冗談だろう。」 オールフェスは呆れたように呟く。 「となると、アメリカ人共は、わざわざ3万から4万近くの兵員を運ぶために、腐るほどの数のスカイトレインを集めた、 という事になるのか?」 「はい。そうでなければ、プリシュケを始めとする6箇所の拠点は制圧出来ません。私としては、アメリカ側は極秘に、 この降下部隊を編成していたのではないかと思います。報告を見る限り、敵部隊の行動は迅速かつ、的確であり、 兵力の差もあるとは思いますが、守備隊は有効な手段を実行に移せぬまま、敵に制圧されています。その結果、 機動軍の第9軍は、拠点に居座った強力な敵部隊を突破できぬまま、損害ばかりを出して撤退する羽目になりました。 アメリカ軍は、この反攻作戦のために、あのような大規模な降下部隊を編成し、実戦に投入したのでしょう。」 「その結果、連中はエルネイル地方にまんまと、橋頭堡を築けました・・・・て訳か。」 オールフェスは頭を押さえながらギレイルに言った。 「練度の高い軍団規模の降下歩兵部隊を乗せるために、わざわざ1000機単位のスカイトレインを集めまくって、 作戦を実行に移す、か。アメリカの奴らは、狂った戦い方ばかりをしやがる。くそったれめ。」 彼は頭を振りながら、呻くように言う。 「しかし、第9軍の主力はまだ健在でありますし、中部方面軍では後方予備軍の投入を行なうと報告しておりますから、 戦局の挽回はまだ可能です。」 「まっ、それもそうだが・・・・」 オールフェスは小さな声でそう言った後、ギレイルから隣のレンスに顔を向ける。 「海軍からも話を聞こうか。」 「はっ。」 レンスは短く答えてから席から立ち上がる。代わりに、ギレイルが席に座った。 「陸軍総司令官が話したとおり、エルネイル地方の連合軍は急速に勢力を増やしながら、現地の支配権を広めつつあります。 陛下、海軍は昨日早朝から本日未明に掛けて、エルネイル沖の敵艦隊の情勢をレンフェラル等を使って調べさせました。 その結果、エルネイル沿岸には、少なくとも3000隻、多くて4000隻近くの大船団が居る物と思われます。」 レンスの言葉に、オールフェスは目を見開く。 閣僚達も、彼の言葉に驚きの声を発した。 「元帥閣下。いくら何でも、それは過大報告ではないのですか?」 国内相のギーレン・ジェクラが尋ねる。 「あなたは確か、連合軍は最大でも、1000隻の船団でもってジャスオ領に侵攻してくるはずと申したはず。 それだけでも馬鹿げた事ですが、いくらなんでも、3000隻から4000隻というのはあり得ないでしょう。 もしかして、海軍ご自慢の生物兵器は不調気味ではないのですかな?」 「いや、事実です。」 ジェクラの嫌味の含んだ質問に、レンスは即答する。 「陸軍のワイバーン隊から送られてきた報告にも、敵船団は少なく見積もっても予想の倍は居る事は確実、とあります。」 「レンス、その報告は確かなのか?本当に、あいつらはそんなに大量の船を用意出来たのか?」 「陛下。相手はアメリカ軍です。それに、南大陸からも船を徴用すれば、それぐらいの船舶はすぐに集まります。」 「という事は、連合軍の船団は寄せ集めではないか。」 閣僚の1人があざ笑うかのような口ぶりで言う。 「ならば、ワイバーン隊の一斉攻撃で沈めてしまえばよいでしょう。」 「残念ですが、それは極めて難しい相談です。」 レンスはムッとした表情になった。 「ギレイル。確か、船団上空に向かった攻撃隊は多数の敵戦闘機によって迎撃された上、対空砲火によって少なからぬ 犠牲を出したそうだな。」 「ああ。輸送船5隻を撃沈し、4隻を損傷、敵機25機を撃墜したが、船団攻撃に向かった130騎のうち、58騎が 帰らなかった。負傷したワイバーンや竜騎士も居たから、130騎の中で、すぐに作戦に使えそうなのは、60騎しか 居なかったよ。船団上空や橋頭堡には、常にアメリカ軍の戦闘機が待機している。攻撃隊が損害を出すのも、無理はない。」 「陸軍総司令官が言われるとおり、船団や橋頭堡には常時、多数の護衛が張り付いています。」 「敵の航空戦力が多ければ、こちらも増やせば良いでしょうに。レンス閣下、海軍にも自慢の竜母部隊がおるでしょう?」 ジェクラはレンスに質問する。 シホールアンル海軍は、最近は続々と新鋭艦が竣工、就役している事もあって戦力が増えている。 竜母機動部隊である第4機動艦隊は、7月に入ってからは新戦力が追加された事もあって、保有戦力は正規竜母7隻、 小型竜母8隻、戦艦7隻、巡洋艦17隻、駆逐艦68隻。 航空兵力は実に940騎を数え、洋上航空兵力としては最大規模である。 ジェクラは、機動部隊の兵力と、ワイバーン隊の航空兵力を総動員すれば、敵にも大損害を与えられるのでは?と、 暗に尋ねていた。 だが、 「簡単に言って貰っては困る!」 レンスはジェクラを睨み付ける。 「エルネイル海岸の輸送船団は、アメリカ太平洋艦隊主力の援護を受けているのですぞ?主力部隊はあのハルゼーが 率いる高速空母部隊で、空母20隻、艦載機1000機以上の大機動部隊です。我が海軍は、行けと命じられれば すぐに出動します。ですが、その時には、ハルゼーは必ず、全力でもって迎え撃つでしょう。」 「アメリカ軍は主力以外にも、小型空母20隻以上を保有し、船団護衛や地上部隊の支援を行なっている。 これに加え、ファスコド島には陸軍所属の大航空部隊が控えている。昨日だけで、敵は陸軍機2000機、 艦載機1000機、計3000機以上の実戦機を出動させ、我がワイバーン隊や地上部隊と互角以上に張り合っている。 海軍が勝利しても、その時は敵機動部隊との戦闘でかなり疲弊しているだろう。そこに陸軍航空隊との戦闘に入れば、 量に押し潰されるのは目に見えている。」 「では、このまま何もせずに居ようというのですか?連合軍の思うままに任せれば、ジャスオの領民共は一斉に反乱を 起こすかもしれませんぞ?」 ジェクラが語調を強めながら言う。 「勿論、我々も策は練っている。」 レンスは言い返した。 「海軍では、昨日からエルネイル地方の敵に対してどう対応するか盛んに話し合っている。」 「レンス。海軍としては、連合軍に対してどうするか話は決めたのか?」 「いえ、まだ結論には至っておりません。」 オールフェスの問いに、レンスは首を振る。 「しかし、幾つかの戦法で持って、エルネイル沿岸の敵船団、並びに海上戦力を攻撃しようかという案が出ています。 案の中には、竜母機動部隊を用いた洋上作戦も含まれています。」 「機動部隊・・・・リリスティ姉の艦隊をねぇ。」 オールフェスは小声で独語してから顔を俯かせる。 彼としては、機動部隊を使うのはまだまだ先にしたいと考えていた。 第4機動艦隊は、例の計画を成功させるにはどうしても必要であり、敵が計画に乗ってくるまでは、竜母を1隻たりとも 失いたくなかった。 しかし、このまま主力部隊を後方に引っ込めたままであれば、調子に乗ったアメリカ機動部隊はジャスオ領のみならず、 レスタン領やヒーレリ領にまで襲い掛ってくるかもしれない。 いや、今のままでは確実にやって来るだろう。 (まっ、あそこの航空兵力は、機動部隊なしでもかなりあるからな。機動部隊が分派・・・いや、全部離れても、まぁ 何とかなるだろ) オールフェスは内心で呟くと、俯いていた顔を上げた。 「海軍の作戦に関しては、お前達に任せるよ。ひとまず、がら空きに近いヒーレリ近海を補強しねえといけないな。」 「分かりました。必ずや、連合国海軍に一泡吹かせてやりましょう。」 レンスはそう言うと、恭しげに頭を下げてから、席に座った。 「陸海軍の責任者が言うように、エルネイル地方の戦況は良くない。敵の兵力は、事前の見積もりよりも多いだろう。 レンス、ギレイル。敵の上陸兵力は、どれぐらいだ?」 オールフェスの質問に対して、ギレイルが答えた。 「これはかなり大雑把ではありますが、推定ながらも、連合軍は20万以上の大軍をエルネイルに向かわせてきた、 かと思われます。」 「これは、昨日来寇してきた船団に乗っているか、あるいは上陸した敵を合わせた数です。」 レンスもオールフェスに返答する。 「連合軍部隊があれだけとは限りません。ファスコド島には、まだかなりの兵力が待機している事でしょう。後方に居る 予備部隊も含めれば、敵の反攻戦力は、事前の見積もりの3倍ないし、4倍以上に膨れ上がるでしょう。」 「つまり・・・・連合軍は、最低でも40万以上の実戦部隊を、ジャスオ領に送り込んでくるって事か。」 オールフェスは深いため息を吐いた。 「しかし皇帝陛下。これは好機でもありますぞ。」 それまで黙っていた、国外相のグルレント・フレルが発言した。 「ここで連合軍の陸海軍に大打撃を与えれば、講和を結ばせる事も可能です。特にアメリカは、我々と違って国の首脳部は 民意を気にしながら戦争を行なうという欠点があります。ここで多くのアメリカ人を殺し、それが国民に知られて厭戦気分 が広まれば・・・・」 「まっ、それも手ではあるんだけどな。でも、俺達はジャスオだけじゃなく、レスタン領からも敵の攻撃を受けている。 そのため、軍はレスタン領とジャスオ領に兵力を分けれなければならねぇ。要するに、俺達は奴らのせいで、やりたくも ない2正面作戦をやる事になったんだ。もし、ジャスオの敵さんを潰しましたーとなっても、レスタン領の敵が前進して くれば結果は同じ。俺達はまた攻められまくる。」 「ですが陛下。どちらか一方の敵を壊滅させれば、戦力を一方向に差し向ける事が出来ます。そして、その敵もまた 壊滅させる事が出来れば、必ず、連合国・・・・特にアメリカは講和を申し入れてくる筈です。」 「ジャスオやレスタン領を失う事になってもか?」 オールフェスは鋭い目付きで、フレルを見つめる。 「はい。我が軍も犠牲は大きいでしょうが、時間を掛ければ必ず、敵の進撃を止められる筈です。再来年には新兵器も 続々と登場します。例の浮遊艦隊も」 「フレル国外相!それまで、敵が待ってくれるとお思いですか?」 フレルの言葉を、ちょうど正反対の席に座っていた内需大臣が遮った。 「私が聞いた話によると、アメリカは既に、B-29スーパーフォートレスという高性能の大型飛空挺によって、 帝国本土へ爆撃を開始したようですな。敵がエルネイルにスーパーフォートレスの発信基地を置けば、西部にある 有数の工業地帯、並びに軍需工場、そして軍の訓練施設等が狙われます。そうなれば、資材は思うように調達出来難く なるでしょう。となれば、新兵器の開発速度にも影響が及びます。」 内需大臣は姿勢をずいと前のめりしてから、更に続ける。 「同盟国マオンドでは、B-29の戦略爆撃によって首都を含む各地が狙われ、兵器生産を含む各分野に影響が出ている ようです。それと同じ事が、この帝国において起こらぬとは限りません。そうなる前に、我々は敵に決定打を与えねば なりませんぞ?」 「そうだ!今こそ、帝国の総力を挙げて敵と戦うべきだ!」 他の閣僚がフレルを指さしながら叫ぶ。 「待って下さい!確かに、あなた方の言われる事も理解できます。」 ギレイルが顔色を変えながら皆に言う。 「しかし、今戦うにしても、我が軍は装備全般において、敵に後れを取っています。無論、我々も出来る限りの事はします! 各地で限定的な攻勢も行なう予定です。ですが、ここで全軍を挙げて決戦に持ち込み、勝利したとしても、損害が大きすぎて 次の敵の攻勢を支えられないという事態に陥りかねません。」 「海軍としても同意見です。攻勢に移るにはまだ早い。陸にしろ、海にしろ、敵部隊の戦力は余りにも強大で、今は付け込む 隙がありません。こちらが打って出られるまでは、もうしばらく、時間が必要なのです。」 レンスもまた、ギレイルに同調する。 だが、2人の意見を聞いた閣僚達は、それでも収らない。 「情けない・・・・余りにも情けない!」 ジェクラがあきれ果てたように言い放つ。ギレイルの目からは、どこか芝居がかっているようにも見えた。 「かつては無敵帝国軍として謳われた陸海軍が、このような弱気な言葉を発するとは。私は真から失望しましたぞ!」 「国内相!あなたはまだ分からないのか?」 レンスが怒りに顔を赤くしながら、ジェクラに向かって言う。 「ジャスオに上陸した敵は、実戦経験や練度の高い部隊を持つ米軍が中心戦力です。空には無数の飛空挺。 海には沿岸を好き放題に攻撃出来る大機動部隊が控えている。加えて、上陸作戦に参加した南大陸連合軍は、 今までの連合軍とは違う。武器・装備は優秀なアメリカ製に更新された侮れぬ敵です。それに対して、我々は 敵と比べて、質・量共に満足とは言えない。こんな敵と戦ったらどうなるかは、言わずとも分かるでしょう!」 「私はそんな言葉を聞きたくない!前線軍が負けるのは、将兵の意地が足りぬからだ!」 ジェクラの口から飛び出した暴言とも取れる言葉に、ギレイルは怒りに顔を赤く染めながら立ち上がった。 「貴様・・・・今何と言った!?」 「何度でも言おう。」 ジェクラはその剣幕に怯まず、フンと鼻を鳴らした。 「軍は昔と比べて余りにも」 「いい加減にしろ!!」 いきなり、ドスの利いた怒鳴り声が会議室に木霊する。参加者達は、皆が声の響いた方向に顔を向けた。 「おい、お前達は、ここでクソつまらん口喧嘩をするために集まったのか?」 オールフェスは左手で頬杖を立てながら、憤りを露わにした口ぶりで言う。 「喧嘩するぐらいなら、家に帰って自分のくそったれな姿と睨めこっでもしてろよ。それとも、口喧嘩を止めて、 建設的な話をするか?俺はどっちでも良いぜ。面倒が無くなるからな。」 オールフェスは投げやりな口調で皆に言った。会議室はしんと静まり返ってしまった。 「なぁ、どうすんだよ?」 「陛下・・・・申し訳ありませんでした。」 ギレイルが畏まった口調で言うと、深く頭を下げた。 レンスもそれに見習って非礼を詫びる。 「陛下。正直申しまして、私は納得できません!」 ジェクラは尚も議論を続けようとする。そのしつこさに、頭を下げたレンスとギレイルがピクリと動いた。 「ああ、ちょっと黙ってろ。」 オールフェスは何気ない口調でジェクラに言った。 「話は終わりだ。それとも、エルネイルに行って見るか?お前の足りない知識を埋められると思うんだが。」 ジェクラはオールフェスの言葉を聞くや、たちまちのうちに顔からサッと血の気が引いた。 「おっしゃる通りです。しかし、私はまだやる事がありまして・・・・」 「なら、普通に議論をしよう。とりあえず、今は静かにしようか。」 オールフェスは微笑みながら、口元に左手の人差し指を立てつつ、ジェクラに言う。 穏やかな表情に対して、視線は刺すように鋭かった。 「は・・・・はい!」 ジェクラは慌ただしく頭を下げると、そそくさと席に座った。 「ま、下らん事は置いといて。ひとまず、しばらくは防戦と言うわけだ。俺としても、奴らに主導権を握られるのは 我慢ならねえが、でも、人間、時として我慢しなければならない。今はその時期だと、俺は思う。ギレイル!」 オールフェスは一際高い声で、ギレイルを呼んだ。 「はっ。」 「例の武器が完成し、部隊に行き渡るまで、軍はなるべく消耗させないようにしろ。その間、苦しいだろうが、 出来る限り、敵に出血を強要しろ。手段は問わない。」 「はっ、仰せの通りに。」 ギレイルは改めて頭を下げた。 「海軍の方でもしっかり頼む。敵の艦隊をなるべく、ジャスオ領の付近に留めてくれ。」 「分かりました。我々も全力を尽くします。」 2時間ほどの会議が終わった後、閣僚達は自らの仕事場に戻っていった。 オールフェスは会議室を出てから、いつも使用している執務室に戻った。 執務室に入ると、彼は執務机の前にある椅子に腰掛けた。 執務机には、書類の束が幾つも置かれている。彼は普段、この書類の山と格闘している。 仕事はいくらでもあった。 「はぁ。ここんとこ、毎日が疲れるぜ。」 オールフェスは愚痴をこぼしながら、書類の1枚を取って目を通す。 20分ほど、淡々と仕事した後、彼は手を休めて後ろの窓に振り返った。 外は、降りしきる雨のせいで視界が悪いが、晴れの日になれば、ここから首都が一望出来る。 オールフェスは、ここから眺める風景が好きだった。 「俺の生まれ育った街・・・・ウェルバンル。俺の全ては、ここから始まった。俺を変える切っ掛けとなった あいつに出会ったのも、ここだった。」 彼は、脳裏にあいつの顔を思い浮かべた。 オールフェスとどこか似ていながら、頭はかなり良かった、昔のあいつ・・・・ 変わり者だったあいつは、オールフェスの馬鹿げた提案にも、しっかりと答えてくれた。 「はぁ?世界を平和にしたい、だって?」 オールフェスの提案を聞いたとき、あいつは何気な口調で返してきた。 「ああ。今はまだ早いけど、シホールアンルは近いうちに、他国を超える力を持つ。そして、その力を使って、 北大陸や南大陸を統一するんだ。」 「こりゃ、突拍子もない事をいいやがる。」 あいつは笑いながらオールフェスに言った。 「何でそんな事を思いついた?」 あいつは俺に質問してきた。それに、オールフェスは自信満々に答えた。 「誰もが、のほほんとして暮らせる世界を作りたいからさ。シホールアンルなら、それが出来るかも知れない。」 しばしの間を置いて、あいつは愉快そうに笑った。 あいつの笑い声はかなり大きかった。ツボにはまったのだろう。 「な、何がおかしいんだよ!」 「いや、別に。何でもねえよ。」 怒るオールフェスを、あいつはたしなめた。 「その心意気、気に入ったよ。お前なら、そんな世界を作れるかも知れないな。」 あいつは、心底感嘆した口調でそう言った物だった。 そして、オールフェスは準備を整えた上で、行動を起こした。 それから、早10年が経った。 「10年か・・・・・・」 オールフェスは、ため息を吐きながら呟く。 「もう、10年も経っちまったんだな。」 彼は寂しげな表情で、外を見続ける。 様々な悲劇を体験した末に、自らの信念に基づいて起こした大陸統一戦争。 その様相は、未知の国、アメリカというとてつもない国の参戦によって大きく変化した。 戦争の行く末は、10年前には予想もし得なかった方向に向けて着々と進みつつある。 雨の中に、うっすらと建物の輪郭が移っている。 時折、彼は宮殿を抜け出して首都を歩き回っていた。 「少し前までは、あいつらの顔を見て回るのが楽しみだったんだが、今ではそれも出来なくなっちまった。」 彼は苦笑しながらそう言い放つ。 何故、大帝国の皇帝たるオールフェスが、わざわざ城を抜け出して街をぶらぶらと歩き回るのか? 答えは簡単である。 「あいつらはのんびりと、生活を送っているかなぁ。」 オールフェスは、雨の中の町並みを見つめながら呟いた。 彼は、自分達の国民が、自分の理想としていた、のほほんとしながら生活を送っている様子を見るのが好きだった。 いずれは、他の国の住民も、このような生活を送らせてやりたいと、オールフェスは思っていた。 だが、それに至るまでには、色々な問題が立ちはだかる。 オールフェスはそれを解消するために、あえて、邪道とも言える方法を取って来た。 それで、犠牲が少ないのなら、別に良かった。 その責任は、自分が負うつもりだった。 だが、世界は、彼が思っているほど甘くはなかった。 奴ら・・・・・アメリカ合衆国がこの世界に召喚されてから、全ては変わった。 オールフェスは、1枚の書類を手に取り、それをさっと読み通した。 「ハッ、国際法違反・・・・ねぇ。」 彼は馬鹿にしたような口調で呟いた。その書類は、捕虜の取り調べに関する物だった。 シホールアンル側は、捕虜の取り調べによって、アメリカ軍が国際法という決まりに基づいて行動している事を突き止めている。 捕虜からの証言によれば、シホールアンル帝国が行なってきた行動は、明らかに国際法違反であり、責任者たるオールフェスは 確実に戦争犯罪人として裁かれる、と、書類にはそう書かれていた。 「何が戦争犯罪人だよ。無茶苦茶言いやがって。」 オールフェスは口元を歪めながら、書類を机に放り投げた。 「ウィステイグを無差別爆撃したお前らだって、同罪だろうが。」 彼は憎らしげな口調で呟きつつも、後ろの窓を眺めてみる。 ウィステイグの空襲で、シホールアンル側は住民に死者1892名、負傷者4800名を出す損害を受けている。 負傷者の中でも、腕や足を失ったり、目などをやられたりして、重度の障害を負った物が実に3割以上にも及び、 仕事が出来なくなった彼らは、実質的に死んだも同然である。 シホールアンル側は、このウィステイグ空襲に対して、 「アメリカは無垢な住民を狙い撃ちにし、6000名以上の市民を死傷させた!我々シホールアンルは、 この無差別爆撃を決して許さない!」 と、広報誌は勿論の事、南大陸陣営に至る各所にまで声明を発表した。 それに対して、アメリカ側は、住民に死傷者が出たのは、事前に通達を行なったにも関わらず、住民を避難させなかった シホールアンル帝国が悪いと派手に宣伝した。 南大陸各国の中には、都市爆撃を行なったアメリカに対して非難する声が多数あったものの、アメリカ側の声明が 発表されるや、悪いのはアメリカではなく、シホールアンルであると認識された。 そして、シホールアンルは被害を局限できる好機があったにも関わらず、無為に国民を死なせた国家として南大陸中のみならず、 解放されたばかりの被占領国からも笑い物にされてしまった。 アメリカはその後、更に声明を発表し、ウィステイグ空襲を非難するシホールアンル帝国に対して、 「自らは被占領国において、それの数千倍もの住民を虐殺している上に、自国民までもを無為に死なせている。 シホールアンルの蛮行は、明らかに国際法違反であり、厳しく罰せられるべきである。」 と、シホールアンル側を激しく非難した。 この一連の出来事をフレルから聞かされた時、オールフェスは心底から失望した。 彼から見れば、アメリカは敵国に無差別爆撃を行なっても、その責任を相手になすりつける薄汚い畜生共にしか見えなかった。 「敵国の領土を平気で爆撃し、その責任を相手に押し付ける奴と戦争してるなんて・・・・・俺の計画書には、 こんな狂った国と戦争するなんてどこにも無かったぞ。」 ま、悪いのは俺だがね、と呟いた後、彼は口を閉じた。 昔から住み慣れてきた首都ウェルバンル。 自らが生まれ、自らが変わるきっかけを作ってくれた町。 その町が、B-29によって蹂躙されたら、死傷者は計り知れない数になる。 そうなったら・・・・・ 「俺は、皆をのんびり暮らさせるどころか、絶望を与えまくった悪魔・・・・て事になるな。」 彼は、自嘲するように小声で呟いた。
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{ファンタジー也 基本ルール 小さくてもいいのでろるをお願いします 本体会話は (( でお願いします ちーと設定は禁止です 世界観とかはかんがえちゅうですw}
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名称:ファンタジー世界 その3 後続任務:[[]] 発生条件 アストリッド(ストックホルムの酒場娘)の好感度3つ目MAX 任務目標 1.貨物室1つ分のチーズをアストリッドに渡す 取得物 + ... 装備:アームレット
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340 :303 ◆CFYEo93rhU:2009/08/13(木) 21 47 34 ID hErcdyss0 331 332 期待が大きかっただけに、この現状は乗員にとっても艦にとっても不幸としか言いようがありませんね。 海洋調査 専門の海洋調査船や測量艦を使うべきでしょうね。 その方が精度も高いし、乗員も専門家ですし。 というか、やっています。軍民協力の下、海流やら動植物の調査やら、海底地形の調査もです。 広い大内洋をくまなく調べるのには何年かかるか解りませんが、皇国近海の手近な所から始めています。 西大陸ではイルフェス沿岸、東大陸ではユラ沿岸の貿易港周辺から、測量艦など派遣する予定でいます。 333 訓練はしていますが、転移前に比べて頻度はがくんと落ちました。 334 レーダー装備 大井型のレーダーは、故障や誤探知も出ています。 敏感すぎて、シークラッターに弱い面があります。 でもこれを乗り越えないと、潜望鏡やシュノーケルのみ 突き出した潜水艦を発見できないので、皇国も改良に必死です。 大井型は最新型レーダーの試験運用艦といった側面もあります。 なので、本当の意味で港に繋がれっぱなしではないのです。 瀬戸内海や太平洋(東大内洋)でレーダーやソナーの試験運用兼訓練は、細々と行っています。 レーダー装備は、全体として史実日本よりは配備率は高いし、精度も良いですが、 しかしまだ開発途上の装備である事は否めません。 史実のアメリカですら初期不良とかあったわけですから、皇国が梃子摺らないわけが無いです。 皇国海軍は夜戦を重視しているので、夜間でも遠方の標的を探知発見可能なレーダー装備については、 かなり積極的に研究推進しています。特に電探連動砲雷撃戦の可能性について、ワクテカしています。 昭和17年春現在では、対空レーダーと対水上レーダーを搭載しているのは 超弩級以降の戦艦の全部、重巡洋艦の全部、軽巡洋艦の一部(建造中の大淀型、阿賀野型)。 対空レーダーのみは、大型空母(天城型、蒼龍型、翔鶴型)、軽巡洋艦の多く(上記以外の旧式軽巡)。 逆探は、戦艦、空母(軽空母含む)、重巡洋艦、軽巡洋艦の全部。 また駆逐艦では秋月型駆逐艦のみ、逆探と対空レーダーが装備されています。 その他の駆逐艦は、吹雪型以降の一等駆逐艦が逆探のみ装備しており、その他の艦もレーダー装備準備中です。 大和型戦艦では、レーダー連動射撃指揮装置も試験的に導入しています。建造中でまだ就役していないので、実力は未知数ですが。 海軍は、いずれは駆逐艦以上の艦全てに逆探、対空、対水上レーダーを装備するつもりです。 また、海防艦などにも逆探や対空、対水上レーダーを順次取り付けたいと考えています。 ただ、ド級以前の畝傍などの戦艦や、装甲巡洋艦などは装備リストの順位は低いです。 というか、おそらく装備するつもりは無いでしょう。超旧式で、数年内に退役ですし、 戦闘の前面に出る事は(転移前までは)想定されていませんでしたし。 あと、対潜哨戒機「大洋」が航空機搭載型の逆探と対水上レーダーを装備する予定です。 さらに、北は北海道から南は沖縄まで、陸上レーダー基地が建設中、一部は稼働しています。 満州にもレーダー基地が数箇所ありました(最前線ですから)が、転移で失われました。 神賜島は、元世界に帰還した場合付いて来ない可能性が高いので、固定式のレーダー基地 ではなく、トラックに積んだ移動式のレーダー車両を配備する予定です。 対空誘導弾、対艦誘導弾も、レーダーホーミングのものが研究されています。 ちなみに、レーダーとは直接関係無いですが、電波関連技術として、テレビジョンの 試験放送が何度か行われ、昭和20年頃からはNHKによる全国放送が行われる予定です。 そのために、全国各地の主要都市には電波塔が立ち、街頭テレビが設置されつつあります。 341 :303 ◆CFYEo93rhU:2009/08/13(木) 21 48 31 ID hErcdyss0 335 現状のF世界では大海原を駆けるのは難しいですね。 「何に使うつもりだ。油の無駄だ」でショボーンでしょう。 このまま何十年もF世界に留まり続けるならば、試験艦として細々と 運用されて、データ取りが終わったらスクラップか、良くて予備艦でしょうね。 元々設計の古い旧式軽巡の改装艦ですから、もうこれ以上の発展は見込めません。 酸素魚雷装備艦としては、特型以降の駆逐艦群が高性能なので、今更重魚雷装艦も必要ないし、 脅威度からすると少数の戦艦より大量の潜水艦の方が高い(皇国は、先の欧州大戦で、英国が 独国の潜水艦でかなり酷い目に遭った事を重要視しています)ので、重爆雷装艦となりました。 アメリカからの支援が来る太平洋や、大陸に繋がる皇海や東支那海は、何が何でも 潜水艦を跳梁跋扈させてはいかんというのが、皇国陸海軍の共通認識です。 東支那海からマーシャル諸島までの西太平洋が、皇国海軍の担当海域ですので。 史実の重雷装艦にしても、皇国の対潜巡洋艦にしても、「やる事が極端」なのはご愛嬌です。 336 野生の海竜(エラスモサウルス的)や、魚竜(イクチオサウルス的)、翼竜(プテラノドン的)は、 人間が繁殖しているわけではないので数が少ないですし、空砲で脅せば逃げるでしょう。 むしろこいつ等、絶滅危惧種ですので、あまりほいほい殺しちゃダメです。 人間が苦労して繁殖している飛竜や戦竜の方が、例外的なのです。 その戦竜にしても、全世界で10万も居ないですので。 皇国軍は、飛竜や戦竜を殺しまくってますが、後世から見たら批難の嵐かもしれませんね。 『そもそも数が少ない飛竜(ラントサルス)を絶滅に追いやる原因を作った』とかで。 今までの戦争では、人間が繁殖させる数と戦争で殺される数がほぼ拮抗していましたが、 皇国軍は簡単に撃ち殺すので、繁殖が間に合わずに数がどんどん減っています。 たった1ヶ月で1ヶ国あたり数百を超える損害は、全く想定されていません。 人間が単独か少人数で行動していたら襲われる事もありますが、大型船が襲われたという例 は、この世界の貧弱な木造帆船でも無いのです。ガレオンとかの方がずっと大きいですし。 実際、潜航中の潜水艦が海竜に付き纏われた事がありましたが実害はありませんでした。 ちなみに陸棲竜では、野生でティラノサウルス的な奴 (学:ゴルディオラソス)も居ますが、これも非常に数が少ない。 『ゴルディオラソスに襲われたら、一生幸運だ』なんて話もあるくらいです。 こいつに遭遇するというのがまず幸運(?)で、その上で逃げきれれば、そりゃ幸運でしょうね。 337 司令部要員が乗り込むスペースが殆ど無いんですよ。 西大陸や東大陸に外交官などを運ぶために派遣された普通の旧型軽巡でもかなり窮屈です。 大井型は、旗艦として働くというよりは「通報を受けて駆けつける火消し役」 として期待されていたので、旗艦設備は不十分です。 338 手品ではありませんが、「無理と思わせておいて実は可能」なのを目指し過ぎたかなという思いはあります。 「史実の大日本帝国」では国力とか技術力的に無理かもしれないけれど、「皇国」なら可能なんだよ、 というかなり強引な展開をこれからもしていくと思うので、生暖かく見守っていただけると嬉しいです。 「“アメリカ”なら難なく可能、“大日本帝国”では不可能、そして“皇国”なら頑張れば可能」 レベルのバランスを目指しているのですが、私も物書き初心者ゆえ、匙加減が難しくて。 339 ファンタジーな海洋生物 すいません。 ファンタジースレに投稿してるのに、そっち方面詳しくないんですよね。 思い浮かぶのはシーサーペントくらいで。 しかも、そのシーサーペントも「実在が確認されていない生物」扱いです。 あとは、マンダとかゲゾラくらいしか思い浮かばないのは内緒です。 でも、マンダ相手には大井型程度では勝てる気がしない。 やっぱりここは轟……。
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この資料館は 軍事板「自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた」スレッドの分家板にある『皇軍がファンタジー世界に召喚されました』スレッドにて初回投稿から2年を超えてなお、精力的に展開中の「くろべえ」さんのSS『帝國召喚』の公開済み設定をまとめる為のHPです。 お約束として「くろべえ」さんの設定に忠実に編纂してください。 誰かの書き込みに修正、付加を加えるのもありです。 ただ、飛び先で付加分の書き込みがされている可能性もありますから、そこだけは確認のほどお願いいたします。 春も近くなってきました。 今年は花見に行けると良いなぁ… あと、携帯からのアクセスのトップページを左メニューに変更しました。 少しは使い勝手が良くなると良いのですが ふがいない私に代わり編纂していただいている皆様、いつも有難うございます。 今後とも何卒皆様のご協力のほどよろしくお願いいたします。 文責 ここまで読んだ ◆zJ6rFHbX8Q 2008年03月05日 くろべえさんのHP KUROのどこかでみたような世界 http //www.geocities.jp/wrb429kmf065/ 現行スレ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.18 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1204087700/ 過去ログ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.17 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1194994629/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.16 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1187842098/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.15 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1179579011/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.14 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1173192902/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.13 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1167373446/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.12 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1161151313/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.11 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1157915129/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.10 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1155287974/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.9 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1151766955/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.8 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1148549150/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.7 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1145757330/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.6 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1142596115/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.5 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1139108925/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.4 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1134983039/ 皇軍(明治~WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol_3 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1130199183/ 明治期~WW2の日本軍がファンタジー世界に召喚されますたvol.2 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1125644871/ 明治期~WW2の日本軍がファンタジー世界に召喚されますた http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1116672903/ 資料を閲覧しに来てくれた人 - ■ 表示しているページを編集したい! ページ上の「このページを編集」というリンクや、ページ下の「編集」というリンクを押してください。 分からないことは? @wikiの詳しい使い方はヘルプ・FAQ・初心者講座@wikiをごらんください。メールでのお問い合わせも受け付けております。 ユーザ同士のコミュニケーションにはたすけあい掲示板をご利用ください
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2005.08.22 00 11 abendrot どこに書き込めばいいものか、悩んだ挙句にここに書いてみました。 先に言うと、なかなかディープな話です。でも、どうしても聞いてみたいので聞きます。 皆さんは、ファンタジー世界(現実世界をベースとしない、異世界ファンタジー)に現実世界のものを持ち込むことに賛成ですか、反対ですか? たとえば、単位(距離とか時間とか)を現実のものと同じにする。「あの街まであと○キロメートル」とか、「今日は○月□日」とか。もう一つは、物事を持ち込むこと。「あたり一面、ひまわりの花が咲いている」とか。 とりあえず、私の意見は、基本的に反対です。 理由は単純で、要はファンタジー世界の雰囲気を壊したり、読んでいる途中でいきなりファンタジー世界から現実世界に引き戻される感じがするからです。 まず、単位については、完全に使用することに反対です。この辺りは、文章書く上で何が何でも回避するか、新しく自分で単位を作るか。まあ、後者はほとんどしないですが、月日の名称くらいなら極まれに創作します。(獅子の月、無月の日、とか) で、物事については、一部だけ気になる単語があります。 それは、その単語だけでモノを簡単に想像できる言葉です。例えば、「ビール」とか「ひまわり」とか。その単語を書いてしまうと、それだけで想像の余地なく一つのものが頭に浮かぶ単語。大抵の場合、前後の文を読んでも、その単語は妙に浮いている。何もそんな限定的なモノにしなくても、話の筋には差し障り無いのに、何故か使われている。こういうのが、気になります。 勿論、同じように「ビール」という単語が使われていても気にならない作品もあります。「ランドールに、煙草」は気になりません。それは、あの街の雰囲気と煙草が合致するからだと私は思います。多分、あの空気なら同じように「ビール」という単語も紛れてくれる。けれど、あの町の中に「鉛筆」があるのは、どうしても気になります。 どこで線引きがされているのか、私もまだ良く分かりません。 あと、もう一つ。これは、錬金術についての考察を書いていて思ったことなのですが、とても特殊な単語、専門知識が登場するのも、私は気になります。要は、「錬金術」とか「科学」とかです。 その単語を用いることで、今度はその「世界」が容易に想像できてしまう。しかも、困ったことに、読む人それぞれが少しずつ違う世界。 例えば、「錬金術」は、既に現実世界に存在したものです。だから、錬金術に詳しい人からすれば、その単語を見たらその世界は「中世ヨーロッパ」になってしまう。けれど、錬金術など何も知らない人が見れば、「錬金術」=「魔法」といったものになり、その世界は完全な異世界です。この差は大きくないですか? 勿論、これらのことに関しては、ある程度は作者がその世界のルールに導いてくれると思います。けれど、そうなると、今度は読者が窮屈な思いをすることもある。「この世界では赤というのは、赤、この色である」とどんなに上手に説明しても、付いて来れない人がいると思います。個人の持つイメージを払拭するのは簡単ではないですから。 こういったことを考え始めるときりが無い……長くなりましたが、とりあえずはこんな感じの意見です。 皆さんのご意見・反論・と言うか長すぎるよこの書き込み等を聞かせてください。 あ、ちなみに、なんだか言い訳がましいですが、私は共有世界に「錬金術」という概念を持ち込むことに反対しているわけではないので。ここでは、あくまでも「異世界ファンタジーに持ち込む単語」という考えだけを中心にして語りました。誤解のないように、一応それだけは書いておきます。 しぐれもん ファンタジーで現代単語は、「反対派」です。 例えですが、 戦国時代の日本を書いてる小説で、デートやキスと言った単語を使わず、逢い引きや接吻という単語を使うのが暗黙のルール。 ファンタジーでは、ファンタジーでの単語を使うべきです。08/22 00 17 野良(--) いいねぇ、こういうネタもこのサークルの醍醐味のひとつだ。 ガンガンテーマをくれてください。 単位や物品に関する表記の問題。俺も小説として書く際にはそこそこ注意する点です。 ただ、このへんも人によって受ける印象が異なる点ではあるよな。 例えば俺は、ファンタジー世界においてセンチは違和感感じるが、フィートやインチって言われるとなんとなく受け入れられる。寸や尺も許容できる範囲だ。 時間の単位は微妙だが、一刻を「ある程度の時間」という意味で使うことはある。刹那なんてのはよく使うし。 ようするに、この手の表現は、作者によって異なることであり、読者はそれを受け入れて読むしかないのではないか、ということだな。なにしろ、万人が納得できる世界観なんてものは作りようがないわけで。慣れてもらうしかないだろうなと。作者が読者に対して、その世界に慣れやすいように配慮することは必要だと思うけど。 単語に関して、「人間」「猫」「木」などが現実と異なるものを示す場合。これは別の言葉を設定するべきだと俺は思う。名詞でこういった簡単に想像できるものの場合、最低でも外見はそっくり、というものにすべきだろう。ワンワンと鳴く「猫」と表記されても、説明無しで想像できるのに対し、ブルドックのような「猫」と言われてもわけがわからないからだ。その世界にいることが前提だけどな。猫のいない世界で「猫のような」という形容はありえないわけだし。 08/22 01 44 野良(--) 専門的な言葉に対して。これは厄介だよな。正直「錬金術」という言葉で、人によってこれほど印象に差があることはちょっと考えていなかった。いや、勉強になる。 問題は、作者としてはどの言葉が専門的かがよくわからないことなんだよな。特に元が空想的産物であるファンタジーなものは。ゴブリン、からイメージする形も人それぞれだろうが、大抵の小説ではその容姿はあまり深く説明していないはずだ。 これも単位と同じように、読者に受け入れてもらうべき領分だと思う。十分な説明が話の中でされていることが前提だが。一人で作ってると見落としがちなんだよな。だから出版には編集という仕事があるのだろう。 以上が俺の意見。 基本的に、作者もがんばるから読者もついてきてね、というところだな。 肝心なのは、その話が面白いことだろう。内容が楽しければ、よりよく知ろうと思ってくれるだろうからな。多少の違和感はガマンして読もうと。 作者が最大限違和感を無くす努力をしていることが前提だがな。 そして共有世界のことをいわせてもらうと、この場合は単位や言葉の定義はしっかりとしておくべきだと思う。そうでないと共通した世界だという雰囲気がもてないからだ。 しかし単位なんかはややこしいなぁ。センチやグラムをそれっぽくファンタジックにするか? 08/22 01 44 しぐれもん ドルをちょっと変えて、「ダラー」とか。 ありきたりですね。 Moneyから「モネイ」とか。 円(Yen)から「イェン」とか。 ファンタジーから「ファン」とか「タジー」とか。 設定上の、先進国的な国から、由来を付けるとか。08/22 16 41 abendrot えと、その世界に無いものを表現として使うのは勿論論外です。でも、「あってもおかしくないよなぁ」というものに関してはどうでしょう? 単位については、私の意見は「出来るだけ使わないで、表現する」がいいのではないかなぁと思います。きっとそっちの方が文章力が付くし(笑 何か単位を作るにしても、お金の単位くらいでしょうね。距離とか重量は、例え共通単位をつくっても、読む方にとっては、覚えなくてはいけない横文字(漢字でも同じですけど)が増えるだけでしょうし。08/24 23 15 野良(--) その世界においてどの程度のものがあるか。これがややこしい。 テレビやクーラーなんてものがあるのはおかしいだろうが、映像を送る水晶球だの、冷気を生み出す杖だのはアリだろう。それに単語として「テレビ」「クーラー」を使う……まぁ俺なら適当に造語を作るな。 うーん、ちょっと内容から離れるか。まぁチャットの雑談のネタにでもしよう。 単位だが、現実の標準単位をちょっとファンタジーっぽくする、という方法もいいかもしれない。メーターをメル、グラムをグーラ、とか……イマイチだな。それに厳密にいえば10メルとしてもその世界ではなんか奇妙だよな。10の読みが日本語なのに、単位がその世界の単位読みってのも。 そもそも1メルが1メーターだと説明する方法がないや。設定で小説外に書くしかないんだ。俺流だと。 どうするのがいいんだろう。単位を漢字表記にするか? 08/25 00 39 しぐれもん そう考えると、ハリポタの設定楽ですねー。 現実世界(マグルの世界)と全く異なる世界ではないわけですから。08/25 16 44 水上 える ええと…そんなに反対ではない人です。。 「100円」はあまり使う気にはならないですが…「1分」は使う… ひまわりもバラもOKですね。。。読者に意味が伝わるためを前提に、です。 「あたり一面、ぱけらぽけらの花が咲いている」 説明がなければ意味がわかりません。 「あたり一面、黄色くて大きな花が咲いている」 とすればいいですか? でも、「花」が何か、という定義が現実と異なっている可能性は、どうすればいいですか? 造語で置き換えるのもいいですが、多くなりすぎると読みづらいです。初心者は拒否されているような気がします。。 むこうの世界にある、こちら側では「ひまわり」と呼ばれる何かに当たるもの、と認識してもらえればよいんですけどね。。。 うーん、ただ、時間は、世界観によると思います。太陽の周りを地球と同じようにまわってない星には、1年が12月、1日が24時間の理由がないですもの。。 …って、いうほど純ファンタジーな世界を作ってないかも、私。。。09/04 06 58 水上 える 単位……「りんご3こぶん」?09/04 06 58 しぐれもん 造語ばっかりは難しいですねー…。 時間だったら、朝昼夜とか抽象的に使いますね。(それだって、地球と同じじゃないですけど) トールキンは、地球の6000~7000年前を使ってますしね…。 ホビット庄はイングランドだっけ?(うろ覚え)09/04 10 40 野良(--) 俺的には「1分」をファンタジーで使うのは違和感感じるな。 それはつまり、「1分」という時間を計る方法がないといけないわけで、 「1分」を最初にどう計ったんだろう、という疑問に突き当たるからだ。 でも、モノとして時計はあってもいいよなぁ、とも思うな。書きながらそう思った。 ぽけらぽけらの場合、俺ならば、 「ぽけらぽけらの花が咲き乱れている。太陽のように大きな花弁を、まっすぐ光の方に向けて」みたいにするかな。最初の文章だけでも、とりあえず「花」であることはわかるわけだし。「花」の意味が異なる場合、これはどうすればいいのやら……。 もっとも、ひまわりと同じ形であるなら、それは「ひまわり」としていいんじゃないかね。わざわざ造語にする必要性を俺は感じないな。 09/04 11 47 しぐれもん ぽけらぽけらって…和みますね(関係なし 1分は、確かに違和感ですね。 何ででしょう…?科学的?近代的?う~~ん…………09/04 14 30 abendrot ぽけらぽけら……何故だろう、麻薬の名前に見える--; 何もかもを造語とか、別の言葉で言い換える必要はないと思うんです。だって、そんなことしたら小説書けないし。 でも、だからこそ、どの辺りまでは許せる(?)単語なのかが余計に分からないんですよね。こうなってくると、最終的には個人の感覚によるのでしょうか……09/04 18 25
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湯飲みに玄米茶を注ぎ、缶から取り出した昆布の粉をさらさらと入れる。 自身のカップには健康と美容のために、食後に一杯の紅茶。 ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で。 「総理、国会で“日本以外の世界が滅んだ”と伝えたのですがよろしかったのでしょうか。 変化した人類、ミュータントや超能力者、『魔術』に関する発表は 後の障害者差別問題に繋がりかねない発表でしたが」 「んー。説明しなければならんかね」 武原は湯飲みに付けていた口を外した。 「茂人君とは秘密を共有するもの友人同士、腹を割って話しをしなければいけないと思っていた。 の、前に、敬語は止めてくれんかね。肩が凝る。突っ込みをどんどん入れてくれ。遠慮はいらん」 「最低限の礼儀は弁えているつもりです」 「父にそっくりだな。ときに君は、差別やテロリズムがどのように産まれるか知っているかな」 お茶請けに置いてあった煎餅を齧った。 ばりぼりと一枚食べ、答えた。 「富の不平等」 「違う、それは増える要因であって原因ではない。 イランやイラクで暗躍していたテロリスト、外務畑の君なら彼らを知っているな」 間髪入れずに言葉が返ってきた。 答えを予想していたようだ。 ロシアン・ティーを飲んで喉の煎餅を流し。 少し考え、答えを返した。 「自爆テロやゲリラを支持しているのはエリート層でしたね」 「ビンラディンやザルカウィ、ムジャヒディン、皆世間で金持ちと呼ばれるやんごとない方々だよ。 学生運動や共産主義に取り付かれ、火炎瓶を投げた昔の青年達も大学生を中心とした 知識人と呼ばれる人々だった」 「しかし、直接犯行している方々は違います」 「君らしくない答えだな。現代のテロリストは訓練所で生活し教育された人々だ。 衣食住を保障された手に職のあるテロリストだよ。実態は知っているだろうに」 「だとすると身体的特徴や住む地域に関しても違いますね。テロリズムは国際化していますし、 中東のテロのために協力する日本人も居ますから。 日本でも、沖縄人でない方々が在日米軍基地に対し毎年反対集会を開いてますね」 今時のテロリストは訓練施設や学校で勉強する。 民兵組織に入り、経験を積んでから仕事としてテロ活動を行う者も居る。 テロ組織そのものが学校や養護施設をもっているなどざらだ。 彼らは場合によっては仕事の斡旋までして、スカウト、社交界でのパトロン集めさえ行う。 他国の賛同者を集め、爆弾政策や軍事教練をして、目的の組織などへ潜り込ませる。 アメリカの炭素菌テロでは一時期、在住アメリカ人のテロリストやアメリカ系○○人のテロリストが 持て囃された。彼らは正規の教育を受けていて、生活には困らない身分の人間だった。 アメリカ人と同じ白人だったので、黒人差別などとも縁遠い存在だった。 「もし、富の不平等が原因なら、共産圏にはテロが起こらないはずだね」 「チェチェンですね。ロシア与党の掲げる公約の一つにテロとの戦いがありました」 世間では忘れられつつあるが、近年まで出兵までしてテロとの戦いをロシアは行っていた。 ほんの少しの特殊部隊や工作員を派遣するのではなく、 戦車や戦闘ヘリまで出した軍を中心とする本格的な戦闘である。 「すると君はテロリズムは何処から産まれると思うかい」 「歴史ですか。積み重なった認識のずれが蓄積され、地震の活断層のごとく テロや差別に波及する…ですか」 「ああ。ミュータントに対する発表だけが、決定的な差別へ繋がるわけでもない。 “これから”が大事なのだ」 おかわりの紅茶にブランデーを入れた。 美味しい紅茶が飲めるのは生きている間だけだ。 「政治家としての意見ですね。でも差別は存在する」 「直接外と関わっている君らしい意見だ。“これから”はこれから幾らでも修正が効く“これから”だ。 ミュータント超能力論の根元、もとい“日本以外の世界が滅んだ設定”は嘘と 君も理解していると思う。“後付設定”で幾らでも引っ繰り返せる。 嘘だからいつか見破られるだろう。見破られるのが一ヶ月か十年後か知らないがね。 とりあえず、今のところ考えているテレビ対応としてダークエルフ達との接触がある。 染色体異常、超能力と異形の体との固定観念を持っていた国民に ダークエルフ達を見せたらどうなると思うね? 人類ではありえない超能力を駆使する美男美女、 ファンタスティックなんとかなスーパーウーマンだよ。 TVや国民受けはいいだろう。第一印象を良くしてからドワーフや異種族を紹介してもよかろう」 ダークエルフのカイを会ったときには驚いた。 美幼女だったのである。幼女に美を付けるのは変な表現だが、カイに限ってはしっくり来る。 黒桐から見せられた写真を見てもっと驚いた。ダークエルフ美女軍団だった。 某ゲームの影響でウィルスや遺伝子変異が異形しか産まないと 固定観念を持っている日本人には頭を殴られる衝撃になるだろう。 エルフはTVにぴったりな存在であるはずだ。 悪く見積もっても、そこらのお笑い芸人かタレントか判別に困る女よりよほど美人であるのは間違いない。 「見破られる嘘を付くメリットがありません」 「日本は資源が無いと飢え死にする。突然異世界に転移させられた=資源の場所なんかわかりません、 これから探します、と 戦争で地形が変わった=資源の場所はわかります、 いずれ力ずくの交渉でもなんでもして手に入れます。どっちを国内に発表するかだな」 日本の富は貿易で成り立っている。決してアメリカやロシアのような自己で完結した文化圏ではない。 『祖国がなくなったと知った外国人』や輸出企業は大混乱だ。資源を輸入していた業者達も全滅する。 補給先が無くなったと確定した先で始まるのは、槍と馬に代わる、銃と車を使った食料と資源の奪い合い、 現代の三国志だ。外国人たちは各々のコミュニティを造り、自衛する。 在日米軍に日本国内で独立されては堪らない。 米軍の将校に「あなたの信頼する合衆国は消滅しました」と言ったらどんな顔をするだろう。 日本本土の治外法権な基地に隠してある核爆弾でも持ち出して脅迫してきそうだ。 『文明は滅んでも、世界に人は残る』完全な異世界では救いが無い。 『元の世界が残っている』からには『元の生活に戻れる希望ができる』異世界はそんな幻想すら許さない。 せめて、見切りがついてから海外状況を発表したいと考えたのだろう。 底のない絶望だけを見せられて打ちひしがれるのと底に希望を見つけるのとではどちらがマシかだ。 「だったとしても、悪手でしかありません。 資源を集めるにしても確保のためのインフラ整えるにしても、政府だけでやれる事には限界がある。 地形、現地住民との会話、物品、常に見破られる可能性があります。露見後は政変ですね」 「私は漫画の主人公ではないのだ。常に完璧な答えを出してくれる神が居たら、 喜んで従いたいぐらいだよ。嘘を付いたのは自衛隊をエルブ王国へ派遣するための理由付けだ。 それにゼロからインフラを整えるとこから開発始めようとは思わん。できても途中で資源切れになる」 石油については北海道油田の増産やガス油田が開放されたため、多少は備蓄が伸びた。 それでも、埋蔵量が不安だ。早急に安定が必要だろう。 幸運にも千島にロシアが唾を付けていた埋蔵量が十分な油田がある。 それがあるから良いとして、問題は石油精製施設と千島の採掘施設だ。 日本には一応、精製プラントは存在するし稼動も可能だが、日本全土の需要を満たすためには追いつかない。 プラントは補助程度に使われていたものであり、本格稼動を目的としていなかった。 千島についてはロシアが長年あると決めて、原油の値が下がったため放り出した開発があるだけで、 プラントそのものはできていない。早急な完成が必要である。 農村部では凍死が出るかもしれない。 今年の冬は寒くなるだろう。 このように、資源が見つかっても、採掘や精製するために本格稼動するまで時間が掛かる。 それまでどうやって乗り切るかが課題だ。 プラントなどが出来るまで、当分は中世レベルの化学力の粗悪品を買い付けなくてはいけないだろう。 当たり前だが、質の高い大量の鉄鋼や精製済みのガソリンなどは当分、望むべくも無い。 全て自国で精製しなくてはいけないのだ。 「短期的な視点です。長期的に情報操作は害悪だと考えます」 「無論だ。日本全部滅亡と仮定した場合の対応は“現時点の基本方針”であるし、 “情勢がまだはっきりしていない”。従って異常生物などの問題が明確になりさえすれば、 後は“柔軟に考える”と私は新聞の取材で答えた」 よく政治の場で使われる“適切に対応致します”“前向きに検討いたします”は玉虫色の言葉だ。 聞き手によって好きに受け取れるし、責任を追及されてもあいまいの霧で煙にまける。 「情報を段階的に開放し、ゆくゆくは異世界について理解を浸透させたい。ですか?」 「茂人君。君はなかなか理解がはやい。“情勢がまだはっきりしていない”のを逆手にとれるなら 好きな情報を流せる、不確定情報ならば間違っていてもシラが切れる。 情報を間違ったら自衛隊や分析していた専門家達のせいにすればいい。ミサイルの誤報みたくな。 今は情報が錯綜しているから。どうとでもできる」 「黒いですね。大人の事情を垣間見た気がしますよ」 これやったの絶対総理だろ・・汚いなさすが総理きたない。 だます為に嘘付くのは馬鹿。 真の嘘吐きは思わず騙してしてしまってる真の嘘吐きだからもててるのだという事実。 「なあに、かえって免疫が付く。この程度を黒いと言うのなら政界を生き残れんよ。 私は海外について判明した情報から最新のものを順次国民に流していくつもりだ。 竜の生態、魔法の種類、遺伝子解析、風俗や技術。国をあげての調査は国民も望んでいる」 「後付設定でいくらでも自由に情報を流せるわけですか」 「流さなくていい。ころあいを見て、上がってきた情報に許可の首振りだけすればいいのだよ」 「いつ嘘がばれても、対応策と保身は完了してる。ですね」 「まあな。他にもあえて情報を確定しない、次々に新情報が放送されることによるメリットもある」 「不確定性ゆえの空想ですか」 茂人は手さばきあざやかに、愛知県西尾産の茶をいれた。 武原は差し出された茶をひと口すすって、茂人に話した。 「国民を飽きさせないための娯楽としての海外情報。 まるで中世ファンタジーな世界は視聴者にも興味深い。TVも稼げる、不満も反らせる。 停滞した経済活動の再開。 異世界の生態や動植物の研究は民間にも任せる、我々の住む世界とは全く異なった物達だ。 しばらくは特許や新技術で新聞は賑わうだろう。 当然、病気や寄生虫が怖いから対策のしっかりした一部の大企業だけになるだろうがな」 そういって、畳の上にあぐらをかいて玄米茶をすすった。 「情報の切り張りと編集に演出、まるでTV番組ですね」 「行き過ぎた政治は娯楽になるとどこかの哲学者が予言してたな、まだメリットはあるぞ。 政府発表である、日本以外滅亡という真実を持った嘘は不信を産む」 「デメリットでしかありませんね」 「不信は疑惑を産み、新たな説や技術を産み出すだろう。 より良い説を選んで採用して行けばいいのだ。 我々が現在、『異世界召喚』と呼んでいる説は、たった2週間の間の情報だけで組み上げられた説だ」 「召喚されたのではなかったんですか!」 どんっ!と和風テーブルを叩いた。 カップに入った茶が飛び散る。 武原は慌ててお絞りでテーブルを拭いた。
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第117話 とある将官の憂鬱 1484年(1944年)2月18日 午前10時 ホウロナ諸島ファスコド島 シホールアンル陸軍第515歩兵旅団の指揮官である、ラフルス・トイカル准将は、ファスコド島奥地にある旅団の陣地を視察していた。 「あと少しで完成するな。」 トイカル准将は、この戦区に配属されている第91歩兵連隊の連隊長に言った。 「はい。ここに配属されてからは、士官、下士官、兵総出で陣地構築に当たりました。」 連隊長は、陣地の方に指を指した。 第515歩兵旅団は、第91連隊のみならず、全部隊が塹壕を掘ったり、木材や石材を組み合わせて作った簡易防御陣地 (いわゆるトーチカのようなもの)を作っている。 この陣地は、ある物を想定して作られていた。 それは、敵の航空機、又は艦砲射撃である。ホウロナ諸島は、周囲を海に囲まれている。 シホールアンル帝国の敵であるアメリカは、多数の優秀な戦闘艦艇を有している。 その彼らが、空母部隊や砲戦部隊を押し立てて、ホウロナ諸島に侵攻して来る可能性がある。 アメリカ軍が侵攻して来れば、上陸予定地点を砲撃で更地にし、島の内陸部を空襲で徹底的に叩くであろう。 トイカル准将は、砲撃や空襲による被害増大を避ける為に、塹壕や防御陣地の作成を、旅団の将兵総出で行わせた。 第515歩兵旅団は、半年の工事の末、森林地帯の深部に強固な防御陣地を作る事が出来たのである。 トイカル准将は、地面から少しだけ突き出ている四角状の防御陣地を覗き込む。 防御陣地は、長方形状に穴が開いており、そこから魔道銃の銃身が突き出ている。 この魔道銃は、シホールアンル軍が良く使用する対空魔道銃の1つである。 本来ならば、対空部隊に配備されているはずのこの兵器は、陸戦用兵器として、銃眼から森の向こうに睨みを利かせている。 トイカル准将は、防御陣地の中に入って、銃眼から向こう側を見つめた。 「ふむ、いい出来だ。」 彼は、連隊長に向かって満足したような口調で言う。 「こいつがしっかり働けば、敵の歩兵部隊を釘付けに出来るな。」 「ええ。この型の魔道銃は、もはや必需品となりつつありますからな。」 81年型軽魔道銃は、元々は対空火器として開発された物だが、南大陸戦では、圧倒的な銃火力で持って進撃して来るアメリカ軍に対し、 急造の機銃として使用され、大きな効果を挙げている。 (ここ最近、アメリカ側の戦死者が多いのは、この魔道銃が対人用として使用されたのが原因だ) 北ウェンステル領の戦いでは、歩兵部隊にも大量の81年型軽魔道銃が行き渡り、アメリカ軍に対して幾度も苦杯をなめさせているようだ。 シホールアンル陸軍は、この一連の戦訓から、対空火器として製造されてきた81年型軽魔道銃を対人用としても大々的に使用する事を決めている。 第515歩兵旅団もまた、対空用とは別に、大量の魔道銃を本国から送られているため、このように急造の魔道銃陣地をいくつも設営して、 来るべき敵の侵攻に備えていた。 「旅団長閣下、旅団長閣下!」 銃眼の向こうを眺めていたトイカル准将の耳に、その呼び声は聞こえて来た。 彼は陣地内から出た。 「どうした、マクロヌ?」 トイカル准将は、彼を呼びつけたトールファ・マクロヌ大佐に顔を向けた。 「第75師団のレソール・ホルゴ閣下が司令部に来られております。」 「・・・・分かった。」 トイカル准将は頷くと、随行していた魔道参謀と共に司令部へ向かった。 司令部は、前線から400グレル(800メートル)ほど北に離れているため、戻るまでに少し時間が掛かった。 司令部は、森の開けた場所に建てられた、こじんまりとした小屋のような物である。傍目から見れば、田舎のボロ屋と見紛わんばかりの質素さだ。 その入り口に、3人の紫色の軍服を身に纏った人が立ち話をしていた。 軍服はエリート師団らしく、やや派手なデザインながらも気品が感じられる。 (いつ見ても、良い服装だな) トイカル准将は、自らが身に纏っている茶色の軍服を交互に見やりながらそう思った。 だが、決して羨ましいから言ったのではない。 (あのような派手な服装なら、敵からも目立つだろうな) 彼が、皮肉気な思いを内心で呟いた時、真ん中の男がトイカル准将に振り向いた。 「やあトイカル。」 「これはこれは、ホルゴ閣下。」 トイカル准将は、目の前に居る若い士官に頭を下げながら挨拶した。 レソール・ホルゴ少将は、第75魔法騎士師団の司令官である。 身長は高く、190センチ以上はある。 顔立ちは端整ながらも、常に自信に満ちた表情を浮かべており、短く刈り上げた赤紫色の髪が、彼の満ち溢れんばかりの闘志を表しているかのようだ。 年齢は29歳で、軍人にしては若い部類に属するが、こう見えても16歳の頃から軍人として、様々な戦場で活躍している。 ホルゴ少将は、シホールアンル帝国では10貴族と知られている名門貴族のうちの1つであるホルゴ家の出身であり、ライバルはエルファルフ家と モルクンレル家であると、普段から公言している。 それに対して、トイカル准将は43歳で、彼もまた若い頃から戦場を縦横に駆け巡って来た戦士である。 しかし、派手そうに見えるホルゴ少将とは対照的に、トイカル准将は地味そうな感が強い。 だが、トイカル自身としては、目立つよりも地味にしたほうが良いと、普段から常に言い続けている。 「わざわざこのような場所まで来られなくとも。」 「いや、たまには散歩でもして気分転換でもしたいと思ってね。」 ホルゴ少将はそう言って、邪気の無い笑みを浮かべた。 (こんな人の良さそうな男が・・・・・あの事件を指揮した張本人とは思えないものだ) トイカル准将は、その笑顔を見てそう呟いた。 ホルゴ少将の率いる第75魔法騎士師団は、シホールアンル帝国で数少ない精鋭師団の1つである。 第75魔法騎士師団は、1328年に設立されて以来、様々な戦場で活躍して来た。 北大陸統一戦争では、レスタン王国侵攻やヒーレリ内の反乱軍鎮圧で大きな功績を残している。 レスタン王国侵攻では、末期戦で要塞内に立て篭もるレスタン正規軍を、他の師団と共同で攻め落としているが、この時、要塞内に避難していた 一般住民1万人も、敵軍と共に殲滅されている。 ヒーレリ王国反乱では、反乱軍5万の鎮圧を、第75師団だけで行い、短時間で勝負をつけている。 しかし、第75師団の将兵達は、勝負がついた後も攻撃の手を緩めなかった。 この結果、反乱軍5万のうち、4万人を完全に殺害した他、反乱に加担していたとして、ヒーレリの民6万人を、後に応援に駆けつけてきた 陸軍歩兵師団と共に殺害している。 この事から、第75師団は別名吸血鬼部隊と呼ばれている。 シホールアンル帝国内では、この一連の虐殺事件の事は余り知られておらず、逆に、75師団の将兵は、小なる勢力よく大軍を撃破した 精鋭部隊として、帝国中に同師団の名が知られている。 ホルゴ少将は、ヒーレリ反乱軍制圧作戦の時には大隊長として部隊を率い、“敵の殲滅”を最も積極的に行っていた。 そんな、血に塗れていると言っても過言ではない最凶の部隊を率いるホルゴ少将からは、普通の人間と同じような雰囲気しか感じられない。 「そういえば、昨日届いた魔法通信だが、君は目を通したか?」 「ええ、魔道士に見せてもらいました。」 トイカル准将は小さく頷きながら答えた。 「何でも、連合軍がこのホウロナ諸島に向かって来るようですな。」 「ああ。海軍総司令部からは、エスピリットゥ・サントを出入りする船が多くなっているとの報告も入っている。敵潜水艦の跳梁が激しい今、 奴らは近いうちに攻めて来る。早ければ2週間以内に、ここへ攻めて来るぞ。」 ここ最近、ホウロナ諸島周辺では、アメリカ軍の潜水艦と思しき攻撃によって、輸送船団が被害を受けている。 2日前は、輸送船3隻が米潜水艦に撃沈されている。1週間前に至っては2隻が撃沈され、1隻が大破したのみだが、このような被害は、 輸送船団がホウロナ諸島に来る度に起きている。 ここ1ヶ月で、輸送船、艦艇は13隻が撃沈され、撃破された艦船は8隻に及ぶ。 シホールアンル側は、護衛艦と、レンフェラルを用いて5隻の米潜水艦を撃沈しているが、アメリカ海軍は大量の潜水艦を配備しているのであろう。 アメリカ潜水艦の脅威が薄れる事は全く無い。 今の所、各島への補給物資は充分に入って来ており、備蓄物資も2ヶ月か、3ヶ月は補給なしで戦える分の量は集まった。 しかし、アメリカ海軍が補給線寸断に力を入れている事に加え、敵の侵攻が近いとなった今、頼みの綱である補給船団は、 やがてホウロナ諸島に来れなくなるであろう。 「2週間以内・・・ですか。」 トイカル准将は、どこか緊張したような口調で呟き、北の方角に顔を向ける。 ファスコド島の北には、ジェド島とエゲ島がある。この2つの島に、第22空中騎士軍が展開している。 もし、アメリカ軍が攻め入って来るとすれば、まずは空母部隊を派遣してくる。 その際、真っ先に狙われるのは第22空中騎士軍であろう。 「味方のワイバーン隊が心配か?」 北の方角をじっと見つめるトイカル准将に向けて、ホルゴ少将がニヤニヤしながら声をかける。 「は・・・・・」 「本当に、お前は心配性だなぁ。」 ホルゴ少将は、どこか呆れたような口調でそう言った。 「第22空中騎士軍には、新兵器が配備されているんだぜ?それも、爆弾よりも有用性のある新兵器だ。」 「しかし、数は少ないと聞いていますぞ。」 「ああ・・・・確か、多くが別方面に回されていると聞いたな。だが、それでも何かしてくれるさ。」 ホルゴ少将は快活そうな笑みを浮かべながらそう断言した。 「妙に自信満々ですな。あなたが直接指揮する訳でもないのに。」 「友人が、第22空中騎士軍にいるんだ。」 ホルゴ少将が、トイカルと同じように北の方角を見つめながら言う。 「その友人は、昔から出来る奴でな。地上戦であれ、空中戦であれ常に大活躍だった。特に、ワイバーンを使った作戦ならシホールアンルでも 5本の指に入るほどの腕前だろうな。それに、第22空中騎士軍は、俺の魔法騎士師団のように精鋭で固められている。アメリカ軍の空母部隊 ぐらいは撃破できるかもな。」 ホルゴ少将はそう断言した。だが、トイカル准将は素直に頷かなかった。 「確かに、第22空中騎士軍は頼りになりますが。閣下、相手はあのアメリカ機動部隊です。彼らも、第22空中騎士軍同様、数々の海戦を 戦い抜いた歴戦の部隊・・・・連合軍が誇る精鋭機動部隊です。第22空中騎士軍といえど、敵機動部隊が相手では苦戦は必至だと思われます。」 「そのために、第50空中騎士軍がジャスオに展開しているんじゃねえか。」 ホルゴ少将は鼻で笑った。 「奴らが出てきたら、この2個空中騎士軍で返り討ちさ。」 彼は自信ありげにそう言い放った。 「ところで、陣地の構築はどうなっています?」 トイカル准将は、一番聞きたかった質問をした。 「陣地の構築?ああ、もう既に完成しているよ。見てみるか?」 「ええ。」 ホルゴ少将に誘いに、トイカル准将は二つ返事で受け入れた。 30分後、彼は第75魔法騎士師団の担当戦区にやって来た。 「・・・・閣下。これは?」 「どうだ?なかなか上出来だろう。」 ホルゴ少将は満面の笑みを浮かべながら、陣地を見渡している。 一見すると、トイカルの居る旅団と、ほぼ似たり寄ったりの防御陣地である。 だが、トイカルは陣地ではなく、森の上で訓練をしている兵や、陣地の外で待機している獣達に注目していた。 「敵が上陸して来れば、俺達は召喚獣や魔法を使って、敵を皆殺しにする。」 「閣下。その敢闘精神は見事な物です。」 トイカル准将はそう言いつつも、女性魔道士が操る液体状の訳の分からぬ召喚獣や、森の上で戦闘訓練に明け暮れる兵を見やった。 「しかし、相手はあのアメリカ軍です。銃器を保有した軍相手に、魔法や召喚獣相手では、いささか心許ないと思われますが。」 「大丈夫だ。互いに接近しあえば、アメリカさんお得意の航空支援は出来ないだろう。そうなれば、勝利はこっちのものさ。」 第75魔法騎士師団は、シホールアンル帝国内では、召喚獣を使った戦術で敵を倒す部隊として知られている。 召喚獣は、魔道士によって様々な形をしており、個性もそれぞれであるが、彼らはこれを広く活用する事によって、過去に大戦果を挙げて来ている。 レスタンやヒーレリで挙げた“大戦果”も、この召喚獣を多用した戦術のお陰である。 「閣下、もう1つよろしいでしょうか?」 「何だ?」 「・・・・・防御陣地の作りが・・・・・」 トイカル准将は、陣地に指を差す。 「心配ない。多少陣地の作りが弱くても、こっちは敵を追い落としに行くんだ。さほど使う事は無いだろう。」 ホルゴ少将の言葉に、トイカルは表面で冷静に取り繕いながらも、内心愕然としていた。 (俺は、もう1個旅団か、石甲部隊がほしいと言ったのに・・・・全く・・・・こんな“未経験者”を押し付けやがって!) トイカル准将は、心中で上層部をののしった。 第75師団のような魔法騎士団は、確かに精鋭中の精鋭ではあるのだが、彼らはアメリカ軍と1度も手を合わせたこと無い。 いや、1度だけあったが、その時は米艦によって、輸送船に乗っている所を一方的に叩かれまくっただけで、戦闘とは言いがたい。(むしろ虐殺と言ったほうが良い) それを除いては、魔法騎士団は一度もアメリカ軍と戦った事が無く、ある意味では未経験者といって良い。 しかし、トイカル准将は、大佐時代に南大陸戦線に勤務しており、アメリカ軍の恐ろしさを(空襲に会ったのみだが)味わっている。 そんな彼が、目の前にいる魔法騎士団を未経験者と思うのも無理は無かった。 「閣下は、私が陣地の造り方を提案した時に、参考になると言ってくれたではありませんか。それなのに、陣地構築をこんな中途半端な形で終らすのですか?」 「なあに、心配はいらんさ。俺たちには秘策がある。それが成功すれば、アメリカ人共は皆殺しに出来る。何と言っても、俺達は魔法騎士団だからな。」 ホルゴ少将は、最後に見下すような言葉をトイカルに言った。 そんな彼に、トイカルは怒らなかった。トイカルはむしろ、魔法騎士団の将兵が可哀相だと思った。 (陣地の作り方はなっていないし、こちらから打って出ようと言うし・・・・全く、無知は恐ろしい物だ。上層部は一体なにをやっとるんだ) 悶々とするトイカルをよそに、ホルゴ少将は、第75師団の将兵達と話を始めた。 「閣下、私はこれで失礼します。」 「おお、もういいのか?」 「ええ。私も、担当戦区の様子を見ないといけませんので。」 「そうか。じゃあ、また近いうちに会おう。」 ホルゴ少将はそう言うと、トイカル准将と握手を交わした。 トイカル准将の後姿が見えなくなった。 ホルゴ少将は、彼を見送った後、部隊の指揮官や兵達を雑談を交わしていた。 「しかし、あの旅団長さん。何か元気が無いですねぇ。」 第5特技兵連隊を指揮するレアラ・トリィフン中佐は、嘲りの混じった口調でホルゴ少将に言った。 「普通の奴らは心配なんだよ。」 ホルゴ少将もまた、遠慮ない口調で言う。 「一般部隊は根暗が多すぎる。だから、奴ら格下共はアメリカ軍に勝てないんだよ。」 「師団長、そんな事言って良いんですか?」 「なあに、気にする事無いさ。事実なんだから。それよりもお前達。いよいよ決戦だぞ。余計な運動をして怪我をするなよ?」 「はーい。分かりました。」 トリフィン中佐はふざけた口調で返事する。 「だらけてるぞ、しっかりしろ!」 彼は、彼女に対して一喝したが、 「この師団で、一番だらけている人に言われたくないな~。」 と逆に言い返されてしまった。 1484年(1944年)2月21日 午前7時ミスリアル王国エスピリットゥ・サント 「出港用意!」 戦艦アイオワ艦長、ブルース・メイヤー大佐は、声高にそう命じた。 アイオワの深部から振動が伝わって来る。 「TG57.1、出港します!」 見張員が、味方部隊の出港を知らせて来る。 広大な湾内に停泊している艦船のうち、一群の艦群がゆっくりと出港していく。 駆逐艦、巡洋艦と出港して行き、その次に空母が外海に向かって行く。 先頭の2隻の空母は、艦橋の後ろに巨大な煙突が一際目に付く。 メジャー32、デザイン11Aの迷彩塗装に身を包んだその空母は、開戦以来、常に第一線で活躍してきたサラトガとレキシントンである。 その背後に、インディペンデンス級軽空母2隻が続いて出港する。 この後、戦艦ワシントン、後続の巡洋艦、駆逐艦が出港した所で、TG57.2が出港を開始する。 前衛の駆逐艦が、そして、巡洋艦が出港していく。 その次に、TG57.2の主力を成す正規空母フランクリンとイントレピッド、軽空母プリンストンが出港する。 正規空母2隻のうち、イントレピッドは2月初めに修理のためエスピリットゥ・サント後退していたが、浮きドッグの工員達が大急ぎで 修理してくれたため、今度の作戦に間に合った。 ついに、アイオワの出番となった。 プリンストンが出港したのを確認すると、メイヤーは次の命令を発した。 「両舷前進微速。」 「両舷前進微速、アイアイサー。」 メイヤーの命令を、航海科員が復唱する。機関の唸りが高まり、やがて、アイオワの巨体がゆっくり動き始めた。 「ああ。」 ステビンス中尉は頷いた。 「こっちのほうが兵員数も、装備も上だってのに、あいつらに先陣を切ってもらうとは。全く気に入らん。」 「まあ、決まった事をグチグチ言っても仕方ありませんよ。」 タウトグ曹長は、そう言ってステビンス中尉を宥めた。 「俺達は俺達、奴さんは奴さんです。」 「まぁ・・・・そうだな。」 ステビンスはそう言ってから、微かに頷いた。 「それよりも、出港まで時間がありますから自分らと遊びましょうぜ。」 「もしかして、ポーカーか?」 「ええ。小隊長と対決したいって奴が大勢いますよ。」 ステビンスはニヤリとした表情を浮かべた。 「さんざん俺に負けてるくせに、懲りん奴らだな。いいぜ。相手してやろう。」 彼は、タウトグの勧めを受けると、最上甲板を下りていった。 ホウロナ諸島防衛部隊 陸軍第54軍 第131軍団(司令部エゲ島) 第221歩兵師団(エゲ島防衛部隊) 第398石甲旅団(エゲ島防衛部隊) 第603歩兵師団(ジェド島防衛部隊) 第514歩兵旅団(ジェド島防衛部隊) 第132軍団(司令部ベネング島) 第613歩兵師団(ベネング島防衛部隊) 第515歩兵旅団(ファスコド島防衛部隊) 第75魔法騎士師団(ファスコド島防衛部隊) 陸軍第22空中騎士軍 (エゲ島防衛隊) 第63空中騎士隊(戦闘ワイバーン60、攻撃ワイバーン48、偵察ワイバーン8) 第64空中騎士隊(戦闘ワイバーン60、攻ワイバーン機48、偵察ワイバーン8) (ジェド島防衛隊) 第77空中騎士隊(戦闘ワイバーン54、攻撃ワイバーン54、偵察ワイバーン8) 第78空中騎士隊(戦闘ワイバーン54、攻撃ワイバーン54、偵察ワイバーン8) 後方予備隊 陸軍第50空中騎士軍 第59空中騎士隊(戦闘ワイバーン54、攻撃ワイバーン42、偵察ワイバーン8) 第80空中騎士隊(戦闘ワイバーン51、攻撃ワイバーン46、偵察ワイバーン7) 第81空中騎士隊(戦闘ワイバーン58、攻撃ワイバーン48、偵察ワイバーン8) 第82空中騎士隊(戦闘ワイバーン50、攻撃ワイバーン39、偵察ワイバーン6) ホウロナ諸島攻略部隊 アメリカ第5艦隊司令長官 レイモンド・スプルーアンス大将 第58任務部隊司令官マーク・ミッチャー中将 第1任務群 空母ヨークタウン ホーネット 軽空母フェイト サンジャシント 戦艦ノースカロライナ インディアナ 重巡洋艦アストリア ニューオーリンズ 軽巡洋艦モントピーリア ナッシュヴィル アトランタ 駆逐艦16隻 (艦載機:F6F×144、SBD×48、TBF×82、S1A×16) 第2任務群 空母エセックス ボノム・リシャール ランドルフ 軽空母インディペンデンス ラングレー 戦艦サウスダコタ 重巡洋艦ヴィンセンス、インディアナポリス 軽巡洋艦デンバー サンタ・フェ サンディエゴ 駆逐艦16隻 (艦載機:F6F×228、SBD×47、SB2C×24、TBF×78、S1A×24) 第57任務部隊司令官ジョセフ・パウノール中将 第1任務群 空母レキシントン サラトガ 軽空母タラハシー モントレイ 戦艦ワシントン マサチューセッツ 重巡洋艦ポートランド ヒューストン 軽巡洋艦モービル ヘレナ バーミンガム 駆逐艦16隻 (艦載機:F6F×136、SBD×24、SB2C×24、TBF×72、S1A×12) 第2任務群 空母フランクリン イントレピッド 軽空母プリンストン 戦艦アイオワ 巡洋戦艦コンステレーション 重巡洋艦ボルチモア ボストン 軽巡洋艦コロンビア サンアントニオ サン・ノゼ 駆逐艦16隻 (F6F×124、SB2C×48、TBF×57、S1A×16) 第3任務群 空母バンカーヒル タイコンデロガ 軽空母キャボット 戦艦アラバマ 重巡洋艦ノーザンプトンⅡ ピッツバーグ 軽巡洋艦パサディナ ダラス リノ 駆逐艦16隻 (F6F×84、F4U×60、SB2C×48、TBF×57、S1A×16) 上陸船団・護送艦隊司令官リッチモンド・ターナー中将 第52任務部隊 第1任務群(艦載機補充部隊) 護衛空母サンガモン、サンティー、スワニー、チャージャー 駆逐艦14隻 (F6F×38、SBD×40、SB2C×38、TBF×16、S1A×8) 第2任務群 護衛空母ケストレル、キトカン・ベイ、バゼット・シー、リスカム・ベイ 駆逐艦14隻 (FM-2×66、TBF×26) 第3任務群 護衛空母レアルタ・アイランド、ミッション・ベイ、ガルクレルフ、シャスター 駆逐艦14隻 (FM-2×56、TBF×56) 第53任務部隊 アメリカ軍第5水陸両用軍団司令官ホランド・スミス中将 第1海兵師団 第2海兵師団 第3海兵師団 第4海兵師団 第54任務部隊(第4艦隊から編入) 戦艦カリフォルニア テネシー ペンシルヴァニア アリゾナ 重巡洋艦ミネアポリス、シカゴ、ルィスヴィル、クインシー 駆逐艦16隻 第55任務部隊(臨時に第5艦隊指揮下に編入) バルランド軍第2親衛軍団 第3親衛歩兵師団 第5親衛歩兵師団 第56任務部隊(臨時に第5艦隊指揮下に編入) バルランド海軍第2艦隊 巡洋艦4隻 駆逐艦12隻 バルランド海軍第3艦隊 巡洋艦2隻 駆逐艦12隻 スループ艇18隻